島田市議会が「包括委託」関連経費を含む2019年度予算案を全会一致で否決!~島田市労連、静岡自治労連、自治労連本部の連携した取り組みが議会を動かす
静岡県島田市議会では、10月から市が実施するとしていた「包括業務委託」について、市議会議員の多くから「検討不足ではないか」と反発があり、委託をすれば市職員が委託社員に直接指示することができなくなることについて「特に教育現場は混乱するのではないか」など懸念の声が出され、審議が紛糾していました。
3月15日、島田市議会の各常任委員会は、「包括委託」の関連経費を含んだ2019年度一般会計当初予算案を全会一致で否決することを決めました。島田市労連、静岡自治労連、自治労連本部などの連携した取り組みが議会を動かし、静岡県内の単組にも元気を広げています。
昨年8月1日、「包括委託」の導入方針を決定した島田市は、9月にすべての課に対して「作業内容整理表」による正規職員と嘱託員・臨時職員の業務仕分けを作成させ、10月から嘱託員・臨時職員に対する包括委託を前提とした説明会を実施するなど、異例の速さで導入の準備を進めてきました。これに対し、島田市労連は、「包括委託」に対する要求書を提出してきましたが、労使交渉は遅々として進まない状態が続きました。
こうした状況を受け、自治労連は、会計年度任用職員制度導入による財政負担を理由とした島田市による「包括委託」は、全国に広がるおそれがあるとして、昨年12月「包括委託問題と当面の対応について」で全国的な取り組みを提起。静岡自治労連も島田市労連へ援助に入りました。
1月21日、自治労連本部、自治労連弁護団、静岡自治労連、静岡自治労連弁護団、島田市労連、自治労連・地方自治問題研究機構で構成する現地調査団を結成し、島田市への行政ヒアリングを実施しました。ヒアリングでは、住民サービス低下や偽装請負、官製ワーキングプアを生みだすことへの対応がまったくなされていない実態が明らかになり、島田市当局は、「先進事例を参考する」と答えるのみで具体的な回答がなされませんでした。
また、この問題は地域住民にも大きな影響を与えることから、2月22日、島田榛原地区労連の国民春闘学習会で県本部役員が「包括委託」についての講演を行い、参加者からは署名の取り組みなどが提案されました。
3月7日、島田市労連が対象となる嘱託員・臨時職員を対象に「包括委託」説明会を実施し、昼休みにも関わらず、本庁、学校、保育園などから82人の嘱託員・臨時職員が集まりました。会場で実施したアンケートには55人が回答し、「包括委託」がなじまない職場の実態や雇用、処遇に対する不安などの声が寄せられました。当日は、人事課職員も参加しており、説明会の熱気は当局へも伝わりました。
その他にも、市当局が10月から第1段として実施するとしている対象業務は、学校支援員をはじめとした教育関係が多いことを受け、全教静岡が「包括委託導入の中止を求める要請書」を市に提出。静岡県自治労連弁護団は、偽装請負の問題を中心とした意見書の作成をすすめています。
さらに、国会では日本共産党の本村議員が、自治労連の提供した調査資料に基づき、2月21日衆議院総務委員会で、「島田市の対応は、会計年度任用職員制度による処遇改善の趣旨から外れる」と指摘。総務省の公務員部長から「単に勤務条件の確保等に伴う財政上の制約を理由として、会計年度任用職員への移行について抑制を図ることは、適正な任用・勤務条件の確保という改正法の趣旨には添わないものである」という答弁を引き出しました。島田市議会では、桜井市議会議員が自治労連の資料を基に質問を行い、全員協議会でも多くの議員から「当局の検討不足」「現場が混乱するのでは」などの反発が強まり、常任委員会でも議論が紛糾しました。
こうした取り組みの結果、3月15日、島田市議会の各常任委員会は、全会一致で2019年度一般会計当初予算案を否決することを決めました。26日の最終本会議には、包括委託の関連経費8千万円と、債務負担行為として設定された3年間の委託費約26億円を削除した修正案が提出されます。
浜松市の水道コンセッションを延期させたことに続き、島田市の包括委託を市議会で否決させたことは、静岡県内の自治労連単組、民間労組に元気を広げています。しかし、島田市の染谷市長は、「包括委託が全否定されたわけではない、課題を整理し、次につなげていきたい」としていることから、島田市労連、静岡自治労連は、引き続き取り組みを強化していく構えです。