トピックス 道州制シンポに85名参加
12月14日に明治大学で行財政総合研究所、自治体問題研究所との共催で開催した「道州制と国民・住民生活を考えるシンポジュウム」には85名の参加がありました。あいさつは晴山専修大学教授が行い、永山元日本大学教授と白藤専修大学教授のコーデイネーターの進行によって各パネリストが発言しました。
岩手県一戸長の稲葉暉(あきら)町長は、都会と地方の格差や正規と非正規の格差などの現状をふまえて、持続的で安定的な本質的なあるべき姿を地方自治によって実現していかなければならない。しかし、道州制にしろ、TPP、消費税、社会保障、公共事業などのどの課題も国主導で一方的にほとんど中央集権的におこなわれているのが大きな問題だと指摘。デンマーク等実在するモデルを指針とする日本のモデルチェンジ運動が必要だと提案しました。
立命館大学の平岡和久教授は、道州制、地方交付税廃止、アベノミクス、TPPなどは多国籍企業のグローバル競争のための条件整備という点で共通している。内政を道州に任せ、「自立」の名のもとに交付税廃止、道州における大都市の新たな拠点を開発しようとしている。本来は地域共同社会とその自治権の確立を基本とし、市町村と府県を維持し、内発的発展による維持可能な社会を目指すべきである。国も自治体も共同社会の整備、供給に責任をもち、相互補完、連携を図りながらナショナルミニマムを重層的に保障していかなければならない。自民党の道州制推進基本法案は、国、地方を通じた公共部門の縮小、リストラをすすめ、国民、住民の生活権と地域社会の共同社会的条件が脅かされる。また、国の資産と長期債務を道州に移管するかどうかも重大問題と指摘しました。
鹿児島大学の伊藤周平教授は、社会保障国民会議報告と国会で成立したプログラム法案による社会保障改悪の内容を批判。地方自治と関連の深い国民健康保険ほ保険者の都道府県化などの医療制度改革、介護保険制度改革、保育制度改革の具体的な内容と問題点を紹介。このまま実行されれば社会保障の劣化がさらにすすみ、格差や貧困が今以上に拡大する。非正規雇用、貧困層の若者を国防軍にリクルートして米国軍とともに戦地に送りこむような事態も生まれかねない。
当面市町村と都道府県でそれぞれ改悪がすすめられるが、これらが道州制などの超広域化にすすむと社会保障は完全に後退すると危険性を具体的に指摘しました。
フロアーからは地域における建設事業や公共事業の実態、商工業など中小企業の経営実態、自由法曹団弁護士による法的問題点の指摘、国家公務員や自治体の職場実態が報告され、アベノミクスや公務の縮小が地域住民の暮らしや経済に大きな問題をもたらしていることが紹介されました。
シンポジュウムはパネリストと会場の質疑や討論を通じて道州制の問題点が深められ、自民党などの道州制推進基本法の国会提出を許さず、地方自治と国民、住民の生活をまもる取り組みをすすめることが確認されました。
詳細は行財政総合研究所発行の雑誌「行財政研究」2月号に掲載予定です。
あいさつする晴山先生