研究と報告 138 「デジタル化と公務労働 ~窓口業務の役割から考える」 久保貴裕 (自治労連・地方自治問題研究機構主任研究員)
首相の諮問機関である第32次地方制度調査会の「答申」(2020年6月)が、第一にかかげているのが「地方行政のデジタル化」です。「答申」は「社会全体で徹底したデジタル化が進めば、東京一極集中による人口の過度の偏在の緩和や、これによる大規模な自然災害や感染症等のリスクの低減も期待できる」と、デジタル化が、地域の抱えている諸問題を一気に解決するかのようにのべ、今後、実施すべき「取組の方向性」を示しました。
その内容は、①国と地方を通じて、行政手続きのデジタル化をマイナンバーカードの普及と合わせて推進する、②住民基本台帳や税務など基幹システムをはじめとした地方公共団体の情報システムを標準化し、自治体クラウドによる共同利用を推進する、③AI等のシステムも複数の地方公共団体での共同利用を推進する、④専門人材の確保や職員の育成を図るために研修を充実し、外部人材による支援も行う、⑤住民の個人情報を含む公共データのオープン化等によるデータ利活用を推進する、というものです。
すでに国は「デジタル行政推進法」に基づいて行政手続きの約9割をオンライン化するとし、地方自治体に対してもオンライン化の努力義務を課しています。AIやビッグデータを使い、個人情報保護の規制を取り払って「未来都市」をつくるとする「スーパーシティ法」(改定国家戦略特区法)により、国は全国100か所を目標に区域を指定しようとしています。
国の方針通りにデジタル化が進めば、地方自治体はどうなるのでしょうか。住民と自治体に働く職員は、この問題や課題をどうとらえ、どう臨めばいいのでしょうか。本稿では、自治体の業務の中でも、真っ先にデジタル化の対象とされている窓口業務を中心に、デジタル化と公務労働について検討し、デジタル化について臨むべき基本的な視点について、筆者の私見も交えて述べることとします。