東京都知事選挙と保育政策をめぐって
東京都知事選(2月9日投票)のなかで、保育所に入りたくても入れない、待機児童問題、子どもの育ちと子育てを支える保育行政の在り方が争点になっています。東京都認証保育所、「横浜方式」の実相と認可保育所増設の願いについてまとめました。
東京都知事選挙と保育政策をめぐって
東京都認証保育所、「横浜方式」の実相
東京都知事選(2月9日投票)のなかで、保育所に入りたくても入れない、待機児童問題、子どもの育ちと子育てを支える保育行政の在り方が争点になっています。
「希望のまち東京をつくる会」の宇都宮けんじ候補=日本共産党、社民党などが推薦=は、自身が共働きで子どもを保育園に送り迎えした経験を語り「待機児童は2万5000人にまで増加しました。石原・猪瀬都政の福祉切り捨てがもたらした結果です」と指摘。大型開発優先の都政を変えて「認可保育園の増設、保育士の確保と待遇改善を進め、質の高い保育を確保します」と述べました(1月26日、多摩市)。
自民・公明両党が推す舛添要一候補は、「私は、厚生労働大臣の経験を生かしまして、全力を挙げて東京を世界一の福祉都市にしたいと思っております。そして、例えば保育所でも、認証保育所、東京がやってるんです。厚生労働大臣、国としてやれなかったけれども、東京で先駆けてやる。東京でいろんな改革を先駆けてやっていくことによって、東京から日本を変えていく」と主張しました(1月23日、新宿西口)。
一方、細川護熙候補は、保育園の待機児問題にふれ、自治体直営を減らし、営利企業の参入を促す「横浜方式」を「先駆的」と評価。「(横浜を)見習えば必ず4年間で待機児ゼロを実現できる」と主張しました(1月26日、豊島区)。
●舛添候補が挙げた東京都の認証保育所とは
舛添候補が挙げた東京都の認証保育所とは、保育士の配置基準や保育室の広さ基準を認可保育所より低くし、且つ市区町村の保育実施義務を外して、企業を呼び込み、保育を金儲け産業に変質させる仕組みです。しかし保護者が求めるのは、安心して子どもを預けられる保育水準を確保した認可保育所であり、金儲けの企業参入を規制し認可保育所を整備している自治体(世田谷区など)があります。このことは、中村重美「国の『待機児童解消加速プラン』と東京の保育を考える」(研究機構・研究と報告NO.4)を参考にしてください。
http://jilg.jp/_cms/wp-content/uploads/2013/06/6c533b6cbf67ca54d3ff684dd44f30c1.pdf
●細川候補が挙げた「横浜方式」とは
細川候補が挙げた「横浜方式」は、安倍晋三首相が昨年4月の「成長戦略スピーチ」で取り上げて以来、「多様な保育」「企業の参入」を特徴とする保育政策として用いているようです。しかし「多様な保育」である「横浜保育室」は、東京都の認証保育所同様、安上りの保育のため、保護者から人気がなく、減少していること、企業が経営する認可保育所のなかには、鉄道の高架下や産業廃棄物処理場の隣接地につくられたものも多く、子どもの保育環境としては好ましくないこと、横浜市の「待機児童ゼロ」宣言は、やむなく育児休暇を延長したり、自宅で求職活動をしたり、遠方の祖父母や知人に預けたりして認可保育所の入所を待っている家庭の児童数を「待機児童数」の計算から外した「上げ底( 粉飾・水増し) 」のアピールです。このことは、木村雅英「横浜市『待機児童ゼロ』宣言と『横浜方式』の実相」(研究機構・研究と報告NO.3)を参考にしてください。
http://jilg.jp/_cms/wp-content/uploads/2013/06/f0c226b726f85e666f5eb970d04c4aa9.pdf
●保護者の願いは安心して預けられる認可保育園の増設
保護者の願いは、安心して預けられ、子ども一人ひとりを大切にした保育が保障される認可保育園の増設であることは、昨年来、メディアによって取り上げられている「保育園つくり隊@杉並」などの取組みをみても明らかです。このことは「座談会 子どもの輝き、子育ての喜び いま必要なこと」(研究機構『自治と分権』第54号)を参考にしてください。
木村雅英(自治労連・地方自治問題研究機構研究員)