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2013.09.21

TPPシンポジューム 大学教員の会、主婦連、弁護士ネットで

2013年9月14日にTPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会などの主催で、「このまま進めて大丈夫なの?シンポジューム」が、都内の文京シビックセンターで開催され、会場外のテレビ中継会場を設置するなどいっぱいの参加者による熱気のあふれた集会になりました。

十勝町村会長、TPPには断固として反対する

十勝町村会長の高橋正夫・本別町長は、TPPによる十勝への影響は、5037億円にもおよび小麦、酪農、肉用牛などへの打撃が大きい。TPP推進派の人は、「帯広豚など競争力のある農業があるから大丈夫」などというが、豚だけでは生活はできない。地域経済全体が崩壊する。
十勝地域で、農業団体、消費者団体、労働組合などで「TPP問題を考える十勝管内関係団体連絡会議」を結成し、地域ぐるみで運動をすすめている。3月10日に開催した、TPPから地域、経済、生活を守る十勝大会は参加者4300人が結集した。
東京などの都会に農産品を提供している地方が、TPPで農業が崩壊すれば輸入品だけでは日本全体で生活ができなくなる。断固としてTPPに反対していくと決意を表明しました。
JA中央会の小林寛史農政部長は、調整品などと偽装して輸入規制をかいくぐる問題は今でも多発している。農産品の輸入規制は日本の食生活を守れるかどうか、重要な問題であり秘密のベールで政府がTPP交渉を非民主的に進めることは許されない。

国内法や自治体条例にも影響

TPPに反対する弁護士ネットワークの杉島幸生弁護士は、TPP条約を政府が締結したあと、憲法にもとづき国会が批准することになるが、国際条約は国内法に優越することになるため、国会・自治体による既存の法律、条約は改廃しなければならないのではないかとの危惧を表明しました。
また、新しく法律、条約を制定する場合もTPPルールの範囲内でのみしか締結できずないのではないか。政府や自治体による公共事業や公共調達も、多国籍企業の投資家が相当困難かつ重大な損害を受けた場合には、ISD条項にもとづき国際仲裁裁判所に提訴されることもあると問題提起しました。
 この点に関しては、日本医師会の中川俊男さんも、TPP条約締結にともない国内法の改正が必要となったり、あるいは将来的にとりうる国内措置の範囲が制限される可能性は否定できないとしています。TPPなどの国際条約は憲法の規定により国内法よりも優位になるとしています。しかもラチェット規定(一方向だけ向かうつめ車)により規制改革がいったん行われると後戻りさせることができない、日本国内での検証で修正することができないで、規制改革が一方向にすすむ問題点も指摘しました。

アメリカの保険資本に狙われる日本の医療

日本医師会副会長の中川俊男副会長は、新自由主義政策には一貫して反対してきたが、TPPはこれを加速させる危険なものだ。
すでに日本国内のがん保険はアメリカ資本による独占状態になっているが、今年7月26日に日本政府が100パーセント出資している日本郵政株式会社がアフラックと業務提携した。8月22日には全国の郵便局窓口でアフラックのがん保険の取り扱いを開始している。
TPP交渉の影響で医療分野で危惧されるのは、混合診療の解禁により公的医療保険制度が大きく変質することだ。
混合診療が全面解禁されると、新しい治療や検査、医薬品などが保険診療にならず、自費で高額の負担になる。しかも、その保険外診療はかなりの高額になり、高所得者しか医療を受けられなくなる。そこに民間保険が算入しようとしており、政府とアメリカ資本により保険外の全額自費の部分がどんどん拡大されてくる危険性がある。
2013年6月14日の閣議決定「経済財政運営の基本方針」では、保険外併用療養制度について思い切った規制改革に取り組むとしている。同じく、6月5日には規制改革会議の「規制改革に関する答申」では、保険外併用療養の拡大を検討していくとしている。

食品安全基準も規制改革で変わる

主婦連合会の山根香織会長は、協定交渉の対象は24分野にもわたり、TPPは非関税分野であらゆる規格、規準を協定の対象とし、緩和、撤廃を促す。農業残留基準といった食品の安全規格、環境保護基準、製品安全基準などの国レベルの各種基準をはじめ、地方公共団体が運用する地域の規格・基準についても例外ではない。
 すでに規制改革会議が動いているが、これまでの消費者運動、市民運動などが勝ち取ってきたあらゆる制度導入の成果を台無しにする。TPP交渉からは撤退するべきだ。

TPP反対の大きな連帯を

このシンポジュームでは、日本医師会、十勝町村会、主婦連合会、全国農業協同組合、大学教員の会、弁護士ネットワーク、アジア太平洋資料センターなど、TPPに反対する様々な団体が一堂に会しましたが、フロアーからはこうした共同を引き続き発展させようとの声もだされました。

(記事:専門委員 今西清)

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