季刊 自治と分権 89号
89号は、特集が「コロナ危機における自治体職員の労働実態と課題」
座談会では、寺西笑子氏(全国過労死を考える家族の会代表世話人)、山口真美氏(弁護士・自治労連弁護団)、山本民子氏(保健師・江東区職労委員長)から、コロナ危機における自治体職員の深刻な労働実態、過労死の根絶、労働時間の規制、人員増に向けた喫緊の課題が語られています。
特集論文では、黒田兼一氏(明治大学名誉教授)が「コロナ禍の自治体職員の「働き方」-長時間労働の常態化と過労死問題をめぐって-」、竹信三恵子氏(ジャーナリスト)が「「支えの公務」回復へ新多数派づくり-非正規公務員運動強化への試論-」を執筆いただきました。
随想は永山利和氏(元日本大学教授)。「襲い来る天災・人災の“危機”と政府の“危機管理”体制」で、襲来する“危機”に政府の危機対応はすべて未定で、台湾海峡“危機”、世界戦争“危機”にも“危機”内容と“危機管理”とを明示しない。「“危機”は法を破る」ことを国が国民に深い思慮と賢明な行動を促すべきである。護憲を超える“危機”対応も検討すべき時代に入っているのではないかと。
首長インタビューは、兵庫県西宮市・石井登志郎市長。「自分のくらすまちを、自分の手でよくしていきたい」「経済一辺倒の社会でなく、人間が人間らしく生きられる社会にしたい」と。阪神・淡路大震災でのボランティアの体験が政治家を志す原点になりました。平和への課題、待機児童の解消、気候危機打開と環境保全、自治体職員への期待など、これからの西宮のまちづくりに向けた熱い思いを話して頂きました。
論文では、中山徹氏(奈良女子大学教授)に、「デジタル田園都市国家構想の概要と問題点」を執筆いただきました。岸田内閣の主要施策としてデジタル田園都市国家構想が動き出しました。地方創生をバージョンアップさせ、地方で生じている様々な問題を解決させる施策と位置づけられていますが、はたしてそうでしょうか。デジタル化は魔法の杖ではありません。もちろん情報技術の発展を否定しませんが、デジタル田園都市国家構想は地方自治を後退させ、市民生活に新たな格差を持ち込むものです。そのような点を概観しつつ、情報技術の発展を地域で活かす方向性を考えます。
「季刊 自治と分権」89号の内容は下記のとおりです。
1) 随想 襲い来る天災・人災の“危機”と政府の“危機管理”体制
永山利和((元・日本大学教授・「自治と分権」編集委員)
2) 首長インタビュー 東京都武蔵野市長 松下玲子さん
インタビュアー 永山利和(元・日本大学教授・「自治と分権」編集委員)
3) 特集 「コロナ危機における自治体職員の労働実態と課題」
●座談会
「過労死ラインを超える自治体職員の労働実態と労働組合の役割」
寺西笑子氏(全国過労死を考える家族の会代表世話人)、山口真美氏(弁護士・自治労連弁護団)、
山本民子氏(保健師・江東区職労委員長)、小山国治(研究機構事務局長)
●特集論文
「コロナ禍の自治体職員の「働き方」-長時間労働の常態化と過労死問題をめぐって-」
黒田兼一氏(明治大学名誉教授)
「「支えの公務」回復へ新多数派づくり-非正規公務員運動強化への試論-」
竹信三恵子氏(ジャーナリスト)
4) 論文
「デジタル田園都市国家構想の概要と問題点」
中山徹氏(奈良女子大学教授)
5) 現場レポート
「コロナと豚熱への同時対応で多くの県職員が過酷な業務に従事」
水戸川慶太(神奈川県職労連書記長)
6) 弁護団レポート
「自治体窓口業務委託問題への対応-吹田市市民課業務委託をめぐる運動から-」
河村学(弁護士)
7) 自治の歴史と文化 第10回
「民衆がつくった義民 佐倉惣五郎」
浅尾弘子氏(千葉県歴史教育者協議会会員)
8) ブックレビュー
9) 自治体日誌