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 2007年02月27日(火)

地方財政の変容―構造改革の帰結と問題点②

★地方財政の変容―構造改革の帰結と問題点①につづく。
 以下は、「建設政策」に掲載した同名の論文の後半部分である。


Ⅱ)2007年度地方財政計画と住民生活
 安倍内閣の2007年度予算と地方財政計画をみると、上記のように国から地方への負担の転嫁と地方財政の縮小が続いている。2007年度地方財政計画の特徴をみると、概ね以下の諸点を指摘できる。

①地方財政計画はほぼ前年並みの83兆を確保したものの、地方一般歳出は△1.1%の減となっている(8年連続の減少)。これは、社会保障関係を中心にして約5000億円の増加要因があるにもかかわらず、教職員の減や、給与関係費の減(合計4300億円)、投資的経費(単独事業)の3%(3000億円)の減がこれらを上回るためである。

②地方税が15.7%増加見込みの中で(5兆4700億円の増収見込みのうち、従前の所得譲与税の皆減分3兆円をさし引いても、2兆5000億円近い増収見込み)、地方財政計画と「決算」との乖離是正を加味すると、一般行政経費△0.9%、投資的経費(単独事業)△3.0%とするなど、デフレ型の歳出構造を維持している。

③さらに、地方交付税については、交付税特別会計からの新規借入を廃止し、6000億円近い過去の借入の償還を行っている(18年度補正予算より)。地方財源不足額は、対前年比で半分程度に減少し、4兆4200億円であるが、財源対策債と臨時財政対策債等でカバーし、国の折半負担は新たに生じない状況になっている。全体として交付税は、△4.4%の15兆2027億円と対前年比で7000億円以上減少している。これは、地方税収の伸びの要因もあるが、地方財政計画全体の縮小路線が貫かれており、一般財源が過小に見積もられている要因が大きいだろう。

④国も地方も税収増への対応は、国債や地方債の圧縮など「借金返済」にあて、市場化への対応を強化している点に特徴がある。「財政再建重視」と「市場化重視」のスタンスである。

⑤自治体では、以上の結果として、住民サービスの切り捨てや職員削減=事務事業のカット、行政の民間化・市場化が飛躍的に推進されることが予想される。

Ⅲ)地方分権と地方財政危機―戦後最大の危機に直面する地方自治・住民生活
 国の歳出面における小泉「構造改革」(三位一体改革に対応)の結果は、歳出抑制が追求され、2004年度には年金制度、医療制度(診療報酬・薬価切り下げなど)、生活保護の見直しが進められ、2005年度には介護保険における利用者負担の見直し等、国保制度への都道府県負担の導入、2006年度には医療制度における利用者負担の増大、後期高齢者医療制度導入や介護報酬改定による医療費抑制などが実施されている。
 先に、国と地方の歳出純計の図によって、国の実質的歳出が地方への負担転嫁によって行われていることをみたが、社会保障費の「自然増」に対する本格的な切り込みが、今後予想される。これが「歳出入一体改革」の本質であり、プライマリーバランス黒字化の本質である。
 公共事業の一層の「抑制」に国民の関心が高いことは、相次ぐ知事の談合汚職などへの怒りが背景にあるが、日本の公共事業の対GDP比はフランスなどと大差ない状況に既に至っている。小泉内閣時代に発行した国債の大半は「赤字国債」であり、経常経費を削減しない限り(増税による対応もあり得るが)、これを減らすことはできない構造になっている。
 自治体の方はと言えば、夕張市にみられるように、財政「破綻」をきたす例が既に発生し、「夕張ショック」などと言われている。夕張市は、確かに様々な特殊事情(旧産炭地で人口が1960年代初期には10万を超えていたものが、国の産業政策の転換などによって、現時点で人口1万3000人であるとか、国のリゾート開発から観光重視まで、多くのミスリードと自治体自身の「粉飾」決算を指弾されるなど)があったが、財政問題としてはごく「例外」ということもできない。
 今後予想される、自治体財政危機の「早期是正」制度などによって、新しい「指標」(実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率)が導入され、これの一つの指標でも国の「指定基準」をオーバーした場合、夕張市が再建計画に盛り込もうとしているような、住民生活の切り捨てによる「財政再生計画」や外部監査が強制されることになる。そういう意味で、「第2の夕張にならない」というスローガンは、財政の健全性を守るスローガンにみえつつ、実際のところは、住民生活を「切り捨てる」リストラのスローガンになりつつあるのである。

 こういった「恐怖」による自治体管理は、「財政再生制度」確立の名の下に、総務相による予算変更勧告すら予定されており、実質的に「地方自治」とは名ばかりのものとなる。
 元来、「地方財政危機」というのは、財政収支のバランスが崩れ、赤字が発生するというような「現象」によって、その本質が現れているわけではない。現に、夕張市においても、現実の赤字決算転落には、観光事業などの「過大」な投資のツケが累積したというだけではなく、国の三位一体改革によって、地方交付税が大幅に減少するという「政治的・政策」的な対応を「契機」としている。
 財政危機の本質は、「地方自治」の後退であり、住民生活の危機である。地域産業など地域の経済的基盤が低下・崩壊し、所得が減少し住民生活の低下や負担の増大がみられるなど、その基盤が危殆に瀕することなのである。
 そうであるならば、財政危機のからの早期是正や「再生」の名の下に、更なる負担を住民に転嫁する方式は、財政危機の「深化」以外のなにものでもないということになる。「本末転倒」とは、こういうことをいうのである。

 このような状態が「三位一体改革」や地方分権の「帰結」であり、いま自治体は、市町村合併→道州制などの「自治体再編」と財政危機対応の行政民間化の双方による「自治の空洞化」に直面しているのである。筆者が「戦後最大の地方自治の危機」と述べるのは、以上のような認識をベースにしている。
 夕張市の問題が、実に「タイミングよく」、政府の「財政再生制度」の策定に見合った時期に発生したことは、単なる偶然ではなく、この政策方向に具合よく事態を流し込み、全国の自治体を萎縮させる効果をもつ。いま、自治体は本来の機能を取り戻し、住民生活の「砦」としての役割を一層強くはたす方向をめざすべきなのである。

蛇足
 夕張問題については、筆者は、『自治と分権』第27号(4月発売)に、「夕張市『財政破綻』問題の論点と自治体の危機」という小論を書いたので、参照してほしい。現在、夕張市の住民を励ます視点から、様々なボランティア活動、カンパによる成人式、映画祭の実施などが全国的な関心の下にすすめられている。政府は、こういった事態の下で、あまり「見せしめ的」に夕張を活用できない状況になっているが、同時に、こういった「支援」によって財政危機を克服できるものでもない。それは、やや性質の異なる問題群なのである。政治・政策的に引き起こされた「財政危機」「破綻」は、やはり政治的に解決をしなければならない。小規模自治体を「非自治体化」する方向が示唆され、現実に、市町村合併の一層の強制や、道州制の導入などが喧伝されている現在、「自治」の単位を守り、住民生活を守る姿勢を堅持する必要がある。旧来の農村共同体などの「再生」など、地域コミュニティの再生は地域を再生していくベースになるものであるが、財政危機に対応する手段ではない。もし、これが財政危機に対応した危機「打開策」となれば、それは「小さな政府」「小さな自治体」「非自治体」をめざす政府の掌中に陥ることになる。
 「財政危機」からの脱却は「小さな政府」をめざすなかからは展望はでない。反対に、本格的な福祉国家をめざす路線への転換なかで、その財政政策として、脱却の方向を見定める必要がある。
 ボランティアや様々な支援の活動が活発化するにつれ、それが政治的にどういう方向にむかっていくのか、十分な検討が必要になってくる。
 ある意味で、夕張問題で一番重要なのは、この点かも知れない。

うしろからみた足摺岬のジョン万次郎像

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 写真は、足摺岬にあるジョン万次郎の銅像です。かれが作成した「英会話」の辞書(本邦初)も写真に撮ってきましたので、そのうち公開をします。