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 2005年02月19日(土)

陸前高田市の「挑戦」

●陸前高田市の中里長門市長にお会いをしてきた。
陸前高田市は、三陸の「湘南」とネーミングされるだけあって、リアス式海岸がつづく三陸地方にあって、珍しい砂浜の海水浴場=高田松原を有する。夏には、各地からの海水浴客で賑わう。冬でもあまり雪は降らないというが、今回の訪問では、2日間雪に見舞われた。

 市内には、大きな法人企業はなく、農林漁業や観光が中心のまちである。北に大船渡、南に気仙沼という一大漁港があり、その中間にあって、交通の便もかなり「不便」だと言ってよいだろう。東京から2時間半で盛岡に到着するが、その手前にある一関(2時間半ちょっとかかる)から大船渡線で2時間程度かかる。1時間に1本しかない。

 当然、生活は自動車中心になり、人間は自動車道に沿って動き、大きな「生活圏」を描くことになる。鉄道交通の不便さと自動車の便利さのアンバランスが、自治体の政策スタンスを微妙に歪めるモメントになる。

●中里市長は「共産党員」市長として知られているが、2003年2月に当選した際は、国保税の引き下げや、8億円かかる「タラソテラピー」(海洋療法とでも訳すー海水を利用したリハビリや健康増進の施設)の建設中止を公約に掲げていた。国保税は、財政逼迫にも拘わらず引き下げられ、業者と既契約であったタラソテラピーも当選して登庁した日に契約を解除した。
 少し北にある宮古市は、地総債(地域振興債)の期限切れに「駆け込み」でタラソテラピーを建設したが、当然の事ながら「大赤字」である。恐らく、陸前高田市の財政状況から見て、これを建設していたら、福祉や教育などに支障を来していたであろう。市民の健全な「選択」であったと思う。

 陸前高田市の財政状況を見ると、「市」というより「町」という構造をしめしており、税収は全歳入の12~13%程度に過ぎない。2001年度から地方交付税も大きく減少をして、地方債に依存する財政構造が強まって来ていた。確かに、市内には建設業が多く、公共事業がなければ生活できない部分がある。しかし、岩手県でも多くの市町村が、90年代の後半から公共事業を引き締め、財政危機への対応をしてきたのとは異なり、98年度から2003年度に到るまで、普通建設事業は「絶対額」で減少をしていない。

 この結果、地方債の現在高(累積)は一般税源の2.5倍に及び、地方債比率と公債費負担比率はいずれも20%を超えている。公債費負担比率とは、一般財源から支出する公債費の、一般財源に対する割合であるが、これが20%を超えると財政の「危険水域」と言われている。地方債比率は、公債費の標準財政規模に対する割合である。

 経常収支比率などは低く、一見して、財政危機には見えないが、借金依存型の財政危機と見る必要がある。それも、かなり危険な状態であると診断をした。1970年代の後半以降、財政再建団体(準用団体)となった自治体が16あるが、いずれも、第三セクターや公社などの破綻によって、自治体が財政責任を問われたことが原因であった。
 陸前高田市も、倒産したホテル(キャピタルホテル1000)を買収してきたし、また、土地開発公社なども有している。こういった部分の情報公開や、リクス管理が今後の財政運営の「カギ」を握っていると見て間違いないだろう。

●このような財政構造をもつ自治体は、三位一体改革などの「政治状況」によってその命運を左右されやすい。
 中里市長も財政危機の状態には深刻な危惧をもっておられた。老人保健法の「改正」で、75歳未満の医療費が国保対応になったことなどにより、国保税の引き上げを検討せざるを得ない状況になるなど、国政の影響をモロに受けている。国保や下水道は、一般会計から特別(企業)会計への繰り入れが大きく、一般会計を脅かしている。「行革プログラム」によって、市長自らの給与を20%削減し、職員の給与にも手を付けざるを得なかった。寒冷地手当の指定解除もあり、職員はダブルパンチで、さぞかし辛いところであろう。
 寒冷地手当の廃止によって、交付税の寒冷地補正も1.5億円程度削減されることになり、住民生活にも否定的な影響を与える。


●「まち」を拝見して、いくつか気づいたことがある。第一は、工業団地や分譲住宅が殆ど売れていないことである。高田市は、昔の「まち」が、比較的原状を維持しており、スプロール化しないので、そのメリットを生かす必要があろう。第二は、感心したのだが、商店街が共同出資をしてリプルというSC(ショッピングセンター)を国道沿いに展開をしていた。多くの地方都市で、ジャスコなどの大型SCが中心街を「シャッター通り」にしているのを、目の当たりにしてきたので、この英断・工夫は大したものだと思った。それでも、気仙沼にあるジャスコにかなりお客をとられ、営業は苦しいという話しだった。
 第三に、これまで公共事業を身の丈以上に展開して来たので、それなりにインフラが整っていることである。「海と貝のミュージアム」は、専門家には、高い評価をされているということであった。「健康文化都市」が売りになっていることもそれなりに納得した。

 しかし、自治体の基本は住民の生活を守り発展させることであり、住民参加の行政を進めることであろう。都市化を求める必要は全くない。規模の管理の方がむしろ重要ですらあろう。

●都市と農村・地方の連帯を具体の政策を通じて追求することが、陸前高田市の「生きる道」になると思う。職員の方たちから、色々とお話を伺って、この自治体は意欲のある人材に恵まれていると実感した。是非、住民の方たちと手を取り合って、まちの発展をめざして欲しい。それを実現できるよう「支援」をするのが「県」であり「国」であるハズだ。出来の悪い、「三位一体改革」によって、こういった意欲的な自治体を潰してはならない。

 別れ際に、中里市長が述べた言葉が印象的だった。「この辺の養殖カキは、東京の築地でも1番の値がつく品質なんですよ」。嬉しそうに眼が笑っていた。