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 2005年03月10日(木)

秋田県湯沢市と羽後町の行方②

さて、前回の「つづき」です。

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 この二つの自治体の対応は、合併を軸にしてみると「対照的」であるが、実は、両自治体の「最大の問題」は、そこにはないと私は考えている。
 湯沢駅から中心の商店街を見ると、典型的な「シャッター通り」であり、駅から2~3分のジャスコさえ取り壊しをしていた。この原因は、二つの自治体の役場を結ぶ、真ん中に高規格道路の「湯沢インター」ができていることと関係する。これについては②で取り上げたい。とりあえず「謎解き」としておきたい(笑)。
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 最後に「謎解き」などと述べたが、答えは、湯沢インターから車で15分の位置にできた「ジャスコ」(イオングループ)である。また、JR湯沢駅の北、羽後町への国道沿いにも、イオングループの「マックスバリュー」などが展開して、「新しい」市街地を形成しつつあった。
 今回は、湯沢市と羽後町に託けて、少し「イオン」「ジャスコ」なるものについて考えて見たい。メルマガ005号でも、少し取り上げたので、参照してほしいが、これも引用しておこう。

************************以下引用********************
 ☆地方都市における郊外ショッピングセンターなどで、中心街が「過疎化」する現象は、全国的に展開されています。これは、日米構造協議でのアメリカからの要求で、大規模小売店法(大店法)の規制緩和が始まりました。その後、2000年に大店法が廃止されて、大店立地法が出来ました。これによって、大型店出店の規制は実質的になくなり、各地で大型店の出店が相次ぎました。こういった中で昨年9月に京都市中京区の西新道錦会商店街振興組合(安藤宣夫理事長)が大店立地法施行後、初めて小売商業調整特別措置法(商調法)第14条に基づく「調査」を、府知事に申請しました。
 商調法は、中小小売店の経営に悪影響が及ぶ場合、都道府県知事が調査をし、必要に応じて、出店の延期や規模縮小などを調整や勧告ができることになっていますが、これに着目したものです。
 ただ、大店立地法では店舗面積1000平方メートルを超す大型店を設置する場
合、都道府県や政令市へ届出を定めていますが届け出時に建築設計がすでに固
まっている場合は変更を求めるのは難しいという実情があります。
☆こういったことから、条例による規制が求められていましたが、提案された
条例案では立地法以外の映画館や飲食店などの複合施設も対象とし、事業主が
まず、交通量の変化による影響調査を行った上で計画書を県に提出し、地元の
市町村等の意見を聴いた上で改善点などを通知することになりますが、対策が
不十分な場合は勧告し、従わない場合は公表するというものです。
 現在、この兵庫県の条例案の他に、福島県は立地抑制地域の明示、県の個別
調整、地域貢献策の提示の三点を条例化する予定となっています。北海道や福
岡県も、こういった条例制定の状況に関心を示しているようです。
☆ジャスコの社長が民主党の岡田党首の兄ということから、ということではな
いでしょうが、自民党の中心街再活性化調査会も郊外立地に関するワーキング
・グループにおいて、中心街活性化との関係で議論を進めているようです。
**********************引用終わり********************

●イオングループは、東北地方など「衰退」する地方を「得意」にしているようであるが、今後の地方都市にとって、避けて通ることのできない重大な意味がある。
 イオンのHPによれば、グループ企業158社、総合小売事業 463、スーパーマーケット事業 664、ドラッグストア事業 ※1,561、ホームセンター事業54、コンビニエンスストア事業 2,633といった「巨大企業」である。意外と都会の人たちには知られてないが、その理由は、地方都市や郊外に大きく展開しているからであろう(千葉県習志野市・津田沼駅のイトーヨーカ堂との「スーパー戦争」は今後の小売り業界再編の大きなカギを握っているが)。

●それにしても、北東北はイオンの独壇場である。湯沢市、羽後町のある秋田県も、その象徴であろう。秋田では、秋田市の近くの五城目町(秋田市内から約40キロ)の田圃の真ん中に「ジャスコ五城目店」がある。年間売り上げ目標は60億円という。敷地面積91000平米、売り場面積は14000平米である。ジャスコの店舗としては、それほど大きいわけではないが、周辺の購買力をブラックホールのように吸収する。
 秋田市の南50キロの「かまくら」で有名な横手市(人口4万人)には、イオンスーパーセンター横手南店が展開する。旧マイカル(イオンが買収)店は、現在は「横手サティ(イオングループ)」となり、ファッションを中心として「純化」されて、ジャスコと併立している。
 秋田駅には、イオン系のファッション店「フォーラス」があり、駅から車で南へ15分の秋田市御所野には「御所野ショッピングセンター」がある。更に秋田市で、イオンは2店目を計画している。秋田市は人口30万人なので、人口15万人を一つの「進出単位」とするイオンなら「当然」なのかも知れない。これは岩手県盛岡市郊外のイオンでも同じである。盛岡駅から車で10分のイオンSCは、売り場面積が約4万平米。2店目の出店計画は県議会でも問題になっている。

●こういったイオングループのやり方は、小売業世界一のウオールマートにそっくりである。アメリカでも郊外の大規模店舗との関係で、中心街の衰退が進行し、社会問題になってきた。現在、既存店の売り上げ確保に悩むウオールマートは、日本では西友ストアを傘下に収め、虎視眈々と日本への本格上陸を狙っている。イオンは、つい最近、イトーヨーカ堂を売上額で抜いたとはいえ、世界では25番目程度である。イオンは、トップ10をスローガンにして、大赤字を出して日本から退散する世界二位のカルフール(フランス)の店舗買収も果たそうとしている。「躍進」するイオングループである。

●イオングループの郊外への進出は、自治体にとって、大きな試練である。確かに、パート雇用は大型店なら1000人規模で期待ができる。また、その自治体以外の商圏から、お客を誘引するので、イオンの周り(大体は田圃や畑であるが)にも、他の様々な業態の店舗が展開し、さながら「コバンザメ」の様相を呈する。こういった風景は、鉄道中心時代の「中心街」を寂れさせ、郊外に新しい「市街地的」なものを形成する。そして、「便利」になった郊外に住宅地がスプロール化する。大規模な駐車場も土日となれば、満車になり、場合によっては、待ち時間もかなりになる。まさに、モータリゼーション・高速道路時代の産物である。
 お客は自然と、自動車で家族ぐるみで買い物にくる「若い世代」が中心になる。地方都市の郊外で、かつては東京などの中心地でしかみられなかった「有名ブランド品」が買えるし、ちょっとハイグレードな気分にもなれる。

●湯沢市や羽後町で見た風景は、こういったものであった。市が造成した宅地も売れていたが、やはりイオングループ立地の近辺になっている。中心地の重心が大きく移動し、「旧中心市街地+農村風景」という地方都市のイメージが変わり、日本全国「共通」の風景になっている。これを、三浦展は『ファスト風土化する日本』(洋泉社)と呼んでいる。
 新しい「市街地」が形成され、重心が移動しても、かつての鉄道駅前の市街地がそうであったように、歴史の重みを持った「まち」が形成されるなら、それもまた一つの「発展」かもしれない。しかし、そうなるのであろうか。
 第一に、旧市街地・中心街の「衰退」は「まち」としての風格を損ない、小売業中心(例えば、市内の生産を消費が上回る都市ー観光都市もその一つであるが)の場合は、まち全体の衰退に結びつく。
 第二に、新しく「市街地的」になったSCの周辺は、新しい「まち」として発展して行くかというと、大変に心許ない。いつ、「いなくなっても」それを規制することは、現在の日本ではかなり困難である。現に、スーパーの撤退や再編は日常茶飯事である。イオンは例外になれるだろうか。

●イオングループの決算が公表された。3月2日付の『日経新聞』によれば、衣料品や住居用品の販売が苦戦し、単独営業利益(本業のスーパーのもうけを示す)は「前の期比」で29%減の170億円になっている。既存店の売り上げは△3.4%である。単独税引き利益は24%減の120億円と従来予想を下回った。また、本体の売り上げも新規出店した30店の売り上げの寄与がなければ、更に利益は減少をしているハズである。つまり、小売業の競争では、「1人勝ち」のように見えながら、その実態は大変な苦戦なのである。
 但し、連結営業利益は7%増の1420億円である。これは、デベロッパー子会社、イオンモール、カード会社(イオンクレジットサービス)等の業績拡大が寄与している。連結でみても、旧マイカルの貢献が大きいという。

●こういった状態を見ると、今後、イオングループが発展するとしても、既存店のリストラ・再編は避けられないだろう。そうなると、「新市街地」化した地域から、一斉に「コバンザメ」も撤退し、残るのは、破壊された「旧農地」「工場跡地」といった「悪夢」になるかも知れない。そうならない保障は「ない」のである。ここは、衰退の危機にある「地方都市」の考えどころであろう。


☆参考文献       
  山川充夫『大型店立地と商店街再構築』(八朔社)
  三浦展『ファスト風土化する日本』(洋泉社新書)
  菊池正憲『イオンー大躍進の秘密』(ぱる出版)
  洋泉社MOOK『検証 地方がヘンだ』(三浦展監修)
  イオン(AEON)ホームページ
  鈴木孝之『イオングループの大変革』(日本実業出版社)
  梛野順三『ウォルマートはイオンに勝てるのか』(ぱる出版)