2005年04月13日(水)

まちづくり三法と中心市街地活性化

●『岩手日報』(4月12日)を読んでいたら、「中心市街地活気を戻そう」とう記事に目がとまった。内容は「県(岩手県ー行方)は中心市街地活性化に関する研究会を設置、11日に県庁で初会合を開いた。県内各地で中心市街地の空洞化に歯止めがかからない中、商業の視点だけではなく都市政策、農業政策など総合的な観点から地域に合った活性化策を探るのが狙い。有効な施策が見いだせれば、来年度事業化することを視野に入れており、今後の議論の深まりが期待される」と「リード」に書いてあった。

 新聞報道によれば、産業振興課と地域企画室、農業振興課、都市計画課の職員10人が出席したとある。県内の中小小売商店数は、商業統計によれば、1999年の1万7517店から2002年には1万5796店に減少しているということである。3年間で約1割の減少ということになる。また、県の調査では、03年の空き店舗率は2000年から1.7ポイント増の11.4%になったそうである。
 統計では02年、03年というレベルの数字が発表されいてるが、私の印象では、2005年の現時点では、これに加速がついているように思われる。

 もう少し、新聞報道を追うと、「秩序あるまちづくりを目指した『まちづくり三法』が施行されても、全国的に郊外へ大型店が進出する一方で、中心市街地は衰退の一途をたどる。『三法が機能していない』との指摘が相次いでいる。研究会はこれらの現状を踏まえ、基礎研究や現場調査を含む現状把握、関係者ヒアリングなどを実施」とある。

●確かに、最近、地方都市を訪れると中心市街地の空洞化と郊外の大規模SCが目立ち、まち全体が「虫食い状態」になっているように見える。この問題は「主任研究員備忘録」でも「秋田県湯沢市と羽後町の行方②」や「道州制と地域開発②」などで、若干取り上げてきた。今や、日本の地方都市の最大の問題の一つといってよいであろう。

 岩手県でも「おくればせ」ながら、こうった問題を取り上げることには好感が持てる。この研究会の良い点は、第一に、県庁横断的な取組であり、個別のセクションを跨いだ総合的な検討が可能なことだろう。もう少し欲張れば、福祉部門の参加など、住民生活に直結した部門も一緒に議論をすることが必要であろう。「子どもに優しいまち」「老人に優しいまち」など、年齢や階層の違いも念頭においた、「まちづくり」の観点である。

 良い点の第二は、当然のことであるが、こういった総合的な取組は、都道府県でなければできないことであり、「県の役割」として明確に認識することの重要性である。郊外のSCなどは、その影響が広範囲、複数の市町村に及ぶにも拘わらず、実質的に意見を反映できるのは立地する地点の市町村のみであるので、都道府県の果たす役割は現時点で決定的なものがある。

●さて、こういった問題で先行するのが、福島県の取組であろう。昨年(2004年3月)、福島県広域まちづくり検討会『広域的なまちづくりのあり方に関する提言』が出されている。
 
 【広域的なまちづくりのあり方に関する提言】(本文)

 福島県では2002年に「まちづくりと中心市街地活性化に関する報告書」が発表されており、この時点で「中心市街地の衰退」という問題意識はあったのであるが、当時は老舗百貨店の閉店やイトーヨーカ堂の撤退など、既存の大規模店舗が中心街から抜け落ちる現象が、中心的な課題であった。
 「中心市街地活性化法」は1998年施行であるが、その後、2000年6月に、それまでの「大規模小売店舗法」(大店法)が廃止となり「大規模小売店舗立地法」が施行され、大規模小売店舗周辺の中小小売業者の事業活動の機会確保のための商業調整から、大規模小売店舗周辺の住民の生活環境の保持へと、大規模小売店舗の影響を捉える観点が変化した。
 つまり、周辺の小売店舗への需給面での影響などは、大規模店舗設立の際の規制や調整の対象とならず、交通渋滞や環境問題などに規制・調整の対象が移されたということである。しかし、事実上の「抜け道」もかなりあり、実質的な規制は尻ぬけ状態と言っても過言ではないだろう。

 店舗面積も対象が、500平米から1000平米に拡大された。もちろん、こういった規制緩和は、日米構造協議から始まった、アメリカの対日圧力を受けたものであった。
 2000年の法改正以降の状況は、中心市街地活性化法の存在にも拘わらず、新たな中心市街地衰退をもたらす、大規模店舗の郊外展開に象徴されるだろう。複数の市町村を商圏とする、郊外店舗展開によって、市町村の規制や調整が本来的に求められる状況となったが、改正都市計画法においても、「都市計画区域の内外における大規模な建築物等についての届出制度の導入」などが行われていないため、実質的な規制ができない状態になっている。

●従前の大店法廃止により、中小小売業者との調整が規制の対象にならなくなったため、様々な条件はあるものの、商調法(小売商業調整特別措置法)による、都道府県知事の調整・勧告権の活用なども注目される状況になってきた。自治体の条例についても、「大店立地法」を強化する立場であるが、兵庫県の条例制定に見られるように、都道府県の役割にも光が当てられつつある。

 こういった中での、福島県の対応は注目に値すると思われる。なにより、市町村を超えた広域的な視点から、「まちづくり」や「生活者利益」を中心として、高齢化社会にも対応できる「まち」「中心市街地」の形成を目指している点などは、大いに参考になろう。
 同時に、具体の施策については、ゾーニングが基本と言いつつも、大店立地法によって、需給調整をめざす規制ができない限界も強く意識されている。また、個別の市町村が農地転用などを安易に行って、大型店誘致などを行ってきたことへの危惧も表明されている。
 この時点では、具体の「規制」「調整」の手法については、明確にされていないが、苦悩と同時に、大規模店の地域貢献の「マニフェスト届け」など、創意工夫も見られる。

 これを具体化しようとするのが、「福島県良好な小売商業機能が確保された誰もが暮らしやすいまちづくりの推進に関する条例(仮称)」であり、つい先日まで、条例案に関する「パブリックコメント」を行っていた。 
 
 ここでは、県の責務として「良好な小売り商業機能の確保の推進のための総合的な施策」や市町村との連携による小売り商業事業者や県民との協働などを打ち出している。新設計画の届け出でを、出発点にして、規制というより「誘導」「地域貢献」などが中心であるが、これに、きめ細かい、交通・環境等の基準を打ち出せれば、かなりの効果が期待できるのではないか。

 自治体としての「限界」が目立つが、商工会議所などは、1999年の段階で「都市計画法」の抜本改正を要求していた。
 
 【都市計画法の抜本改正の実現を求める】
 この要求案にあるような、都市計画法の改正が行われていれば、現状はかなり異なったものとなっていただろう。
 
 以上のような問題は、市町村の権限の拡充という「地方分権」のあり方の基本に関わる問題であり、「広域自治体」としての都道府県の規制や調整の権限のあり方にも関わる。「まちづくり」の基本に住民が参加できる、実質的な制度が強く求められているのである。