2006年07月04日(火)
地域格差について
●この間、このブログでも都市と農村の連携問題や、構造改革が進行するなかでの様々な社会的格差について取り上げてきた。今回は「週刊東洋経済」7月1日号に掲載された「地域格差」を素材にして、地域と自治のあり方について述べてみたい。
『週刊東洋経済』(7月1日号)は、「知らずに住んでいるあなたの街の格差」という特集で、36のランキングで徹底比較と銘打っている。内容はなかなかおもしろく、「住みやすい街」「住みにくい街」という仕分けを基準にして、「医療」「借金」「介護」「人口」「交通事故」「ゴミ」「犯罪」「子ども」「税収」「家の敷地面積」などを統計から拾っている。
このタネ本は、同社が毎年発売している「都市データパック」(全国の市)である。私も毎年購入しており、暇な時にパラパラとめくって楽しんでいる。
夕張市が「準用再建団体」の申請を行った際も、夕張市について色々と調べた。住み良さの総合ランキングで夕張市は、780市(市町村合併でかなり増加している)の内、773位である。どん尻はやはり北海道の歌志内市である。これが総合偏差値38.84と「ダントツ」で最下位になっている。夕張市の方は、偏差値が42.38でランクは歌志内と同じ「E」ランクである。
●夕張市が「再建準用団体」の申請表明を行ってから、夏期一時金を昨年よりわずかばかりであるが、増額させたことについて、マスコミから攻撃されていた。
【総務省事務次官が苦言】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060704-00000133-mailo-hok
【財政破綻なのにボーナス大判振る舞い】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060701-00000204-yom-pol
まあ、無神経というか、攻撃されることもやむをえないだろうが、「都市データパック」を見ると、夕張市は人口が急減してきたので、職員一人あたりの住民数は、全国で最下位である(つまり住民数に比して職員が多い)。職員の平均年齢は45.6歳と、これは上から55位である。市長の給与などは、さすがに下位50団体に入っている。
因みに、事業所数も下から数えて4番目であり、伸び率も753位(つまりマイナス成長)である。このような状況から、想定されることではあるが、人口一人あたりの歳出額は全国トップ(堂々たる第1位)であり、地方税収入は下から3位である。地方交付税への依存率が意外に高くない(ワースト50位には入っていない)のは、借金が多いために交付税の相対的比率が低まるためであろう。事実、一人あたり地方債残高は、全国25位である。これも、一時借入金が入っていないので、本来はもっと「上位」に食い込むのであろう。
●『都市データパック』は、夕張市のことをちょっと探っただけで、即座にこれくらいのことがわかる優れものの本なのである。
これらのデータを見て感じることは、こういったランク付けの結果が果たして、市の職員や住民の「なせるわざ」なのかという疑問である。
都市へは法人が集中するので、東京23区、とりわけ中心3区(千代田、中央、港)などの状況を見れば、当然であるが、夕張市などとは「対極」の状況を呈する。
こういった「他力本願」は他の項目にも見られる。例えば、介護のランクで一位になっている東京青梅市は東京都のつくった大規模施設があるので、人口あたりの定員などは当然大きくなる。
反対に、NPM経営や住民協働による職員定数削減で名をはせた志木市は、介護の項目では堂々たるビリである。これは、福祉を軽視している面からみて「実力」と見てよいだろう。志木市なども、このように市政を総合的に分析すると、その「性格」をよく理解することができる。一面的な評価は禁物なのである。
さて、このタネ本をもとにして整理した『週刊東洋経済』の記事も秀逸である。お金持ちが多い自治体とか、税収などは大体予想通りであり、特段おもしろい話はない。しかしながら下記のような項目は日常意識されているだろうか。
①消防職員の充足率
②犯罪数
③学校選択制で入学者ゼロの学校の数
④就学援助率
⑤生活保護の増加率
⑥自殺
⑦水道料金
⑧保育園待機児数(これは多少想像がつくが)
先にも少し述べたが、このランキングには自治体の行政や住民に「責任」があるものと、「自然現象」に近い不可抗力や他力本願などによるものもある。
例えば自殺率などはどうか。私は、この問題を北東北の地域研究を始めてから真剣に考えるようになったが、この10年程度、1位秋田、2位青森、3位岩手であまり動いていないのである。
秋田県では、かつての自殺大国フィンランドなどに学んで、自殺防止の取り組みを進めている。これは国全体の取り組みになってきたが、「防止」の前提として原因の解明が不可欠である。しかし、この取り組みは、警察と病院(医師)が中心になっていて社会的な問題が殆ど無視されている。鬱病やノイローゼ対策に矮小化されたり、という具合である。
それで、自殺防止への行政の対応自体は必要なことであるが、私が違和感をもったのは「数値目標」が掲げられていることである。つまり、かなりの自殺を「織り込んだ」計画になっているのである。たとえ無理でもゼロを追求するということは計画としては駄目なのか?そういう疑問もある。
蛇足であるが、自殺率は農村部の方が都市より高いし、高齢になるほど高くなる。それも、家族と同居の高齢者の自殺率の方が単身(あるいは夫婦だけ)よりかなり高い。日照率や降雪などの自然現象との相関は低いというような特徴がある。案外常識と異なっているのが「自殺」の原因なのである。
●生活保護率の推移などはどうか。この間、保護行政に関わって悲劇を繰り広げてきた北九州だけが、95年から04年の保護率が減少している。他の政令都市では、大阪市の20%を筆頭に数%の増加が見られる。
つまり、北九州の餓死などの悲劇は実は人災と言わなければならないということがわかる。『福祉が人を殺すとき』というベストセラーがあったが、依然として福祉や社会保障は人を殺し続けているわけである。
私は、こういう数字が明らかになる前に、対応すべきだと思うのであるが、それは、職員や労働組合や住民運動による以外ないのである。
消防職員の充足率について、自治労連のHPにファイアーファイターの皆さんの記事があった。もっと大宣伝をして世論を形成する必要があるだろう。充足率は全国平均で75%である。
住民の財産や命を守る(本当に直接的、物理的にである)という使命は一体どこに行ったのか。しかも、最近は市町村合併で消防も合併し、見かけの充足率の上昇があるというのである。つまり、はしご車などがなくても遠くから駆けつけるということで、「一丁上がり」なのである。全くもって、ひどい話ではないか。同じ大阪府内でも、大阪市の充足率は96.8(ポンプ車は103.3)であるのに対し、河内長野市は35.4(ポンプ車71.4)である。
これで、ナショナルミニマムが達成されていると言うのだろうか。それとも、河内長野市には、燃えるものがないとでも言うのだろうか。
●同じ日本の中にあって、同じ制度のもとで行政は運営されている。その中で、多少の格差があるのは仕方ないとしても、命や財産に関連する格差があるのは、どうしても納得できない。
夕張市の財政破綻問題を通じて、色々な問題を考えざるを得ないのである。

