2005年02月01日(火)

京都府「これからの『公領域』のあり方研究会」について

 昨日(1月31日)、京都に行って来ました。主たる目的は、『季刊自治と分権』誌の「憲法問題対談」の相談でしたが、午前中に京都府の経営戦略室で「これからの『公領域』のあり方研究会」について、ヒアリングをして来ました。

 最近では、多くの自治体が「住民・NPOとの協働」や「パートナーシップ(PPP)」などを打ち出しています。東北のある自治体のヒアリングをした際、「NPOとの協働」を掲げていたので、その自治体にNPOがいくつあるのかを訊ねたところ、「まだありません」という返答を頂いたことがあるくらいです。また、住民の運動で図書館建設を要求し、それが実現した瞬間に、地域の自治会がNPOに早変わりして、「指定管理者」制度でNPOに運営を任せるようになったとか、この種の話題には事欠きません。

 自治体の対応が間に合わないくらい、行政のアウトソーシングの新しい手法が開発されて行くような事態で、「言葉」に実態がついて行けない様相すら呈しています。こういった中で、京都府が真正面から「公領域」のあり方を検討していると聞くに及び、これは是非、一度話しをお伺いしたいと思った次第です。また、それを検討しているメンバーが学者ではなく(アドバイザーという形でお一人だけ学者が入っているようですが)、京都府の組織のメンバーが中心だという点にも興味を持ちました。

 さて、この「これからの『公領域』のあり方研究会」というのは、経営戦略室が事務局になっており、人事室・企画参事・労働総務課・保健福祉部・商工部・農林水産部・広域振興局などからメンバーが集まっています。「京都府行財政改革指針-かいかくナビ-」(平成15年~16年)の取組状況を見ると、行革の中心課題として「意識改革」「組織改革」「事業改革」があり、それぞれ、「府民参画(府職員出前語らい15年度655人参加)、即戦力の確保(16年度社会経験重視採用(行政2)6名、任期付職員・研究員採用12名)」「広域振興局への再編・権限委譲(1,293項目)、経営戦略会議の設置、職員定数の適正化(16年度200人削減)」「道路整備のローカルルール策定、NPOとの協働(委託事業16年度18件1億1千万円)、PFI事業(府営住宅常団地)」などの「成果」があがっているとしています。

 つまり、この経営戦略室そのものが、行革の「成果」であるわけですが、経営戦略室のHPを見ると、「これからの『公の領域』のあり方研究会」は、「組織改革」の中に位置づけられています。「公領域」が変化すれば、行政組織は当然それを反映して変化するわけですから、ある意味で当然かも知れません。

行政責任の範囲と公の領域

 研究会の内容は、上記のサイトからダウンロードできるので、ご覧頂きたいと思いますが(添付の図を参照-クリックすると大きくなります)・・・この図も議論の結果を受けて、何回か変化しているようですが・・・「アドバイザー」の話しでは、従来の「公」の概念は、「公」と「私」の二元的理解をベースにしていたが、「公」の担い手の変化を受けて「公」と「私」の他に「サードセクター」(国によって概念が異なるので、ちょっと用語としてはどうかなと思うのですがー行方)を設定して「三元的理解」をし、この「公」と「サードセクター」を新しい「公」と認識するという言うものです。
 
 この議論そのものは、ありふれたもので、「公」を独占していた行政と「私」という議論ではなく、「市民社会」の成熟をうけて、「公を担う民」という新しい「公共空間(公共圏)」を設定するというものです。ここでは、この新しい「公」の概念として「ソーシャルキャピタル」や「ローカル・ガバナンス」をあげています。

 この辺は、実は行政学・政治学や新制度派経済学、それに新自由主義的な公共選択論などのミックスになっていて、それぞれ概念が交錯します。NPMなどの議論と同様です。

 さて、図を見て気になるのは、①サードセクターが丸ごと「公の領域」になっていること、②同じことですが、このサードセクターと民の交わる部分も「公の領域」になっていること、③政策的行政責任範囲と本来的責任範囲をわけ(ナショナルミニマムとでも言うわけでしょうが)、この本来的行政責任範囲も時代の流れによって変化すると述べられていること、などです。

 しかし、よく考えて見ると、民間の市場についてもそのルールは行政・政治的に取り決める必要があるので、行政の責任がなにもないとは言えないわけです。また、サードセクター(公益法人や特別法の法人なども含め)と言っても、許可・認証・準則主義・任意などのバリエーションがあり、アメリカなど、利潤の限定的な出資者配分のある生協などをサードセクターから除外している例もあります。この辺は、民法改正や税法との連動などが求められるとしても、サードセクターをひとまとめにするのはやはり無理があるでしょう。

 新しい議論を積極的に展開しているわけなので、「イチャモン」を付ける気はないのですが、行政と市場の関係をどのように整理し、また、NPOなどの民間非営利団体と営利団体の本質的な区別をどこに求めるのかなど論点は色々とあると思います。最大限利潤の追求を本質とする営利団体(株式会社など)と非営利団体の市場における「棲み分け」をどのように行うのか(競争だけの市場原理に委ねるのか)など・・・

 そして、「本来的行政責任範囲」と言っても、刑務所の民営化をはじめ「戦争の民営化」すら「あたり前」の時代であり、国家主権の一部移譲などもEUなどで始まっています。「国防」「外交」「通貨」などの「公」独占領域すら怪しいわけで、こういったなかで「生活保護」「義務教育」「保育・医療・保健」などがどう扱われるのか、ちょっと怪しい気分になります。

 道路など多少「でこぼこ」していても死ぬわけでもありませんし、災害防止以外の公共事業などは、多少ひいき目に見ても「本来的行政責任範囲」とは言えないでしょうが、こういったものを「全廃」するのか、この辺と統一的な議論もして欲しいと思います。

 本日は、深入りせずに、この辺で止めておきましょう。