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 2005年03月27日(日)

「市場化テスト法(仮称)」案の浮上をどう見るか

【以下、未整理稿】

●3月25日の経済財政諮問会議において、民間4議員(奥田碩日本経団連会長等)が「規制緩和・官業開放のために」という提言の中で「市場化テスト法(仮称)」案を2005年度中に国会に提出するように提案した。また、「規制緩和・民間開放推進会議の報告を受けて、諮問会議においても審議し、法案に向けての基本方針を『基本方針2005』に明示することが必要である」と述べている。

 規制緩和・民間開放推進会議の「平成17年度『重点課題』について」(3月25日)は、「市場化テスト法(仮称)」の早期策定を要求し、「(市場化テスト)のモデル事業は、『市場化テストの本格的導入の是非』を判断するものではなく、『法案作成のため』の試験的導入である」と述べている。

 また、
①規制を伴うような官業を対象にできない。
②官民競争入札にもかかわらず、それを判断・監視する「第三者機関」が法的に存在しない。
③民間との競争により「官が効率化する機会」が失われている。

 といった理由を挙げて、「真の改革のため、可能な限り早期に法制化すべき!」としている。掲載されているスケジュールを見ると、平成18年度には「第三者機関」を設置し、市場化テストの本格実施を要求する内容になっている。

●おひおひ、ちょっと待ってくれ!

 市場化テスト試行で、予定されているものは、ハローワーク関連4事業、社会保険庁関連3事業、行刑施設関連1事業であるが、モデル事業の数の少なさや、実質的に官民の競争にならない、競争の判定ができないという「苛立ち」が滲み出ている。
 しかし、イギリスの例をみるまでもなく、市場化テストを導入するためには、行政制度、予算制度、公務員の雇用制度、公物関連制度などをはじめ、日本の諸慣行などを含めた制度の「前提」を十分に議論しなければならないハズである。
 
 実際、民間4議員の1人である本間正明氏が監修している『市場化テスト』(NTT出版05年1月)においても、光多長温氏は「・・・これらのハードルに目をつぶって市場化テストを実施しても真の行政部門の検証を行ったことにはならない。これらの改革(上にふれた行政制度、予算制度、公務員の雇用制度、公物関連制度などー行方)が伴った市場化テストこそが期待される日本版市場化テストであり・・・」と述べている。また、斉藤徹史氏は「民主制原理や法治国家原理に適合したものとすることを前提に検討していく必要があろう。そして、これまで公務とされてきた事業が市場化テストを通じて民間に委ねられるのであれば、とりわけ公権力の行使にかかわってきた公務員の守秘義務や政治的中立性、平等取扱など公務であるがゆえに必要とされてきた諸原則を、民間においてどのようにしていくべきかを検討する必要が生じるものと思われる。」「その後の事例の積み重ねを踏まえながら体系化していく作業が必要になるものと考えられる。」としている。

 市場化テストそのものに関する認識は、異なるが、市場化テストを口にする以上は、最低限でも、上記のような「手続き」と視点が必要だということは、当然のことであろう。
 こういった手続きをスキップして、一瀉千里に民営化を進めようとする「民間議員」の発想は、コクド・西武鉄道の資産(土地、ホテル、ゴルフ場等)をぶんどり合う、みずほ銀行をはじめとした金融資本のどう猛さ・退廃を連想させる。このような連中こそ、死肉に群がる「ハゲタカ」と言われるに相応しいだろう(どうやら、本家「ハゲタカ」もアメリカから参入のようだが)。

●すべての事項にふれている紙幅はないので、公務員の雇用問題等について触れておこう。イギリスの場合、官民競争で民が勝てば、当該の仕事についていた公務員は、落札した民間企業側に行くか、公務員の中でポストを変わるか、退職するか、などの選択肢しか残らない。
 実際、サッチャー政権以後のCCT(強制競争入札)を含む一連の行革によって、1979年から91年までの間に、中央政府で21万人、地方で4万9000人、パブリック・コーポレーションで157万7000人の職員が削減をされたという(竹下謙他『イギリスの政治行政システム』(ぎょうせい、2002年)他を参照)。

 もっともイギリスの場合は、TUPE制度(Transfer of Undertaking [Protection of Employment]Regulations 1981)があり、官→民、民→官のどちらの方向に「転職」した場合でも、従前の労働条件(年金、給与、その他)について新しい雇用主の下でも継続する制度が、一応はある(労働党は、これを明言している)。実際には、キチンと機能していないという話しも聞くが、EUの規制もあり、国内制度としても整い、そして公務員には労働基本権が保障されている(労使の関係は、ニューレーバーの下では、かなり微妙なものがあるが)。

●そこで、日本に目を向けよう。日本では、公務員制度改革が「一頓挫」している状態である。その「頓挫」を横目にみて、もし市場化テストが推進され、官民競争によって、民に事業・委託が以降した場合、公務員はどうなるのか。
 現状では、国公法や地公法の「分限処分」や、民間とも共通する「整理解雇の4原則」などが参考にされていくことになろう。
 また、市場化テストは「勝ち負け」だけではなく、競争に参加をする部局(この程度の大きさが行政の「単位」基準となる)は、参加する過程で「スリム化」され、場合によっては、先制的に民間委託などを行ってしまうケースも出てくるだろう。イギリスでは6割は官の勝利になっている(次第に低下)が、その過程で大リストラが進行するという具合である。

 市場化テストを強引に推進する人たちは、労働者派遣法のネガティブリストの廃止や、裁量労働制の拡大、臨時やパート労働者などの拡大を無原則的に展開して、「それで済んできた」と思っているかもしれないが、官民の競争の勝ち負けを超えて、周辺の社会的な「費用」が増嵩することにも目を向ける必要があろう。官にせよ、民にせよ、そこで働いている「労働者」を虫けらのように排除することは、絶対に許されないのである。

 折しも、総務省は「新地方行革指針」を発表し、総人件費の抑制や、諸手当の削減などを打ち出し、大阪市の職員「厚遇」問題なども「活用」しながら、福利厚生費の使用者負担を廃止する方向なども示唆している。日本の公務員労働者には、労働基本権が欠落しているわけで、この問題は極めて重大である。そもそも、対等の「土俵」で議論をする形勢にないからである。イギリスの場合は、『市場化テスト及び外部委託における12の基本原則』の中に、職員や労働組合の参加も位置づけられている。

 現在のやり方を敷衍すると、市場化テストで否応もなく「負けた」部分は、公務員制度の改革とも「無関係」に、他の組織や民間に派遣されたり、出向したり、「転職」したりということになる。極めて否定的な「官民交流」となるだろう。また、イギリスとは違って、給与の保障は行った先に「聞いてくれ」となるだろう。「分限」も活用しようと思えば、先にふれたように「整理解雇」の対象となる可能性すらある。排除される側は、労働基本権もなく、人事院や人事委員会等に「不服審査」などを提出するといったレベルしか対抗策がないのが実情である。これでは、最近はやりの異種格闘技ではないが、片方は何でもあり、片方は両手両足を縛られての試合といった様相である。

●市場化テストと指定管理者制度との関係も「怪しい」。委託先競争型の市場化テストの場合を想定すると、落札者が民間だった場合、「公の施設」が絡んでいるとすれば、その落札者は当然に「指定管理者」となる必要がでてくる。だから、市場化テストを拡大して行けば、「公物管理法」等の見直しも必要だし、現在指定管理者制度になじまないとされている部分でも、対象事業となって行くことは確実であろう。事実上の「バイパス」の完成である。

 というわけで、自治体サイドには、課題が山積である。まずは、現実に「なにがおこるのか」を正確に見極め、対策を講じることは当然であるが、より積極的に、行政の役割や民主的な効率化など、住民の理解を得られる方向を打ち出すことが決定的であろう。いよいよ、自治体構造改革もその不気味な姿の全容をあらわしはじめたと言えよう。