2005年03月30日(水)
総務省・新「地方行革」指針の特徴は
29日に、総務省は「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針の策定について」という次官「通知」を、都道府県・政令市の「長」に発した。今回の「指針」は、マスコミが報道するように1997年以来、8年ぶりのものであり、それなりに今日の情勢の特徴を反映したものとなっている。
●今回の新指針は、地方自治法252条の17の5(組織及び運営の合理化に係る助言及び勧告並びに資料の提出の要求)による「助言」という位置づけになっている。これは、2000年の地方自治法改正による国の自治体への「関与」のルールを踏まえたもので、自治法抜本改正以降の初めての「指針」となる。
政治的な位置づけとしては、昨年12月24日に閣議決定された「今後の行政改革の方針」を受け取組のための新たな指針を示す、ということになる。
●さて、具体的内容をあれこれ紹介しても面白くもないので、今回の新指針の特徴について触れておきたい。ダウンロードは以下から
地方行革については、1985年の「地方行革大綱」がはじめてであり、このときは、中曽根内閣の臨調行革路線の流れで「行革は国も地方もまったなし」などのスローガンで、国の行革が地方に及んで来たものであった。具体の内容の中心は、色々とあったが、国から地方への高率補助金の削減などが中心になった。このときは85年のプラザ合意をターニングポイントとして、アメリカから円高・協調金利・内需拡大等の要求を突きつけられ、バブルを発生させる中で、「行革」としては、竜頭蛇尾に終わった。社会保障と地方歳出(福祉)の削減を目玉としたが、上記の政治的な理由や臨調行革のある種の「中途半端性・歴史的限界」を反映したわけである。
第2回(指針としては第1回)は、94年に「自治体リストラ素案」という形で提起され、ローリングされたものが97年に指針形式で発表された。背景は、第2次橋本内閣が96年に「財政構造改革白書」を発表したことにあった。これは、国家財政の危機を地方負担で乗り切ることや、歳出の抑制を具体的に打ち出し、人員配置の抑制・効率化、給与水準の適正化、単独事業の見直し、上乗せ福祉の見直し、使用料・手数料などの確保などが盛られていた。
しかし、97年に消費税率の引き上げ(と地方消費税の導入)が行われると、日本は消費不況に覆われ、その結果、橋本内閣は98年の参院選で「大敗北」を喫し、財政構造改革法そのものが「凍結」「廃止」される状況となった。その後は、公共投資の重点的な実行によって、ごく短期間に国と地方の借金は雪だるま式に膨らむことになった。
こういうわけで、過去2回の「地方行革」は、その内容の良し悪し以前に、国の放漫な政策運営によって「自治体への指導などおこがましい」という事態になったわけである。
●しかし、「地方行革」そのものが「失敗」をしたというのではなく、この10年間に自治体は、歴史的な変容を遂げていると言っても過言ではないだろう。
92~3年頃を境にして、「リストラ」という「用語」も一般生活に入りこみ、企業のグローバル化の進行と平行して、労働力の再編も進んだ。自治体においても、新自由主義的な市場化論理が席巻し、国の財政政策がダッチロール化する中でも、「リストラ」は進行したのであった。
93年の行革審の最終報告には、公務員制度の改革の「機が熟した」という認識や道州制の導入論議の必要性などが指摘され、今日の「諸改革」に連動する動きが顕著になったのであった。
この流れは、95年以降の「地方分権」の動向とパラレルに進行し、資本のグローバル化を背景とした、新自由主義+大国化(アメリカを頂点とした、階層的・帝国主義的な秩序形成)が進行した。
●こういう状況の中で、「構造改革」・地方分権も「現実的に可能」な内容が追求され、自治体の合併・広域再編と自治体の階層的な再編が進行した。中核市、特例市の制度確立、また、合併による「規模・能力」の向上=分権の「受け皿」の形成といった論理であった。
さて、今回の新指針の最大の特徴は、第一に、市町村合併の進展(朝日新聞によれば篠山市をトップして開始された「平成の大合併」は、これまでに317市町村の発足)をふまえ、その自治体経営の「スリム化」を進めることがあげられる。第二に、旧指針と比較して「民営化」の質的な飛躍があげられる。PFI=PPPをはじめ、指定管理者、地方独立行政法人、公営企業の民営化、NPO等との協働、第3セクターの点検(つぶし)などの手法が実用化の段階に入ってきた。行政の役割も重点化し「新しい公共空間」を担う「戦略本部」という位置づけとなる。さらに今後は、市場化テストの導入などが上記手法と連動して来るだろう。第三は、給与削減について、かつてなく、強い姿勢を打ち出していることである。大阪市の労使なれあいの「お手盛り」給与への世論の反発などが「最大限」に活用されている。最後に、こういった具体の内容について、本年を初年度として5年間を重点期間として、数値目標を掲げた取組が追求されていることがあげられる。
●歴史的な視点にたって、今日の自治体をめぐる状況を俯瞰すると、やはり大きな転換点に立っていると見る他はないだろう。今後、5年間、こういった路線で数値目標を上げて、自治体の民間化・民営化が追求されるならば、新合併特例法の期限が終了する頃には、更なる自治体の広域再編と道州制などが本格的に俎上に上ってくるだろう。新指針の中には、都道府県から市町村への事務移譲や出先機関の見直しもふれられている。広域化された自治体の中で、周辺と中心が選別され、場合によっては、現在の地方でもある程度の「国際都市」が形成されるかもしれないし、また、その反面、地盤沈下を加速させる都市も多いだろう。都市における所得、教育、文化の階層分化の進行は、自治体の役割を変貌させる可能性がある。
今回の新指針では、ふれられていないが、「市場化テスト」の進行は、自治体経営を「市場ルール」に合致させる必要性を自覚させる。コストの比較をする場合、一方は「現金主義」他方は「発生主義」では比較できないし、行政コストの計算(原価計算)も、ルールを統一しなければ比較できないからである。こういった方向は、自治体の経営を「分権化」「フラット化」させ、自治体内部の一部局の「経営責任」体制の確立をもたらす。これが「モジュール化」し、民間との「部品」の共有=部品の交換につながる。官民の一体化である。
長期的にみると、こういった方向は、自治体が市場ルールの中で「生きて」行くことを強制することになるが、民間企業と違って、自治体は市場から「退出」することができない。足を靴の大きさに合わせながら、生き延びてゆくことを強制される。
最後になるが、三位一体の改革は、「成功」しようと「失敗」しようと、自治体の格差を拡大し、交付税の削減や地方債自由化による自治体の格付け・選別を強化するだろう。財務省と総務省の対立の中から、国民のための新しい政策展開が生まれてくるハズもない。ここが思案のしどころであろう。

