2005年04月19日(火)
パブリックビジネス狂想曲①
●「これが“50兆円市場”の攻め方だ!」というコピーが踊る『パブリックビジネス・リポート』第1号(2005年MAR、日経BP社)。
4月1日に「市場化テスト推進室」が内閣府に設置され、中央省庁・自治体・民間から14名、規制改革・民間開放推進室との兼務が2名の合計16名の体制でスタートした。今後、更に2~3人程度の増加が予定されている。行政をスリムにし、行革を推進するのが、市場化かと思いきや、大判振る舞い・至れり尽くせりの体制ではある。この推進室は、3月25日の経済財政諮問会議で提起され、閣議決定された「市場化テスト法」導入への取組や、「モデル事業」の推進を行うことになっている。
こういうわけで、官業の民間開放は、アクセル全開になってきた。『日経グローカル』(2005・4・18)は、「官業の民間開放」を特集し、指定管理ビジネスとPFIについて全国の状況を紹介している。
●そこで、『パブリックビジネス・リポート』(以後、『リポート」)と『日経グローカル』(以後、『グローカル』)の記事を中心にして、政府統計などを織り交ぜながら、状況の整理をして見たい。
上記レポートでは、「『情報』『嗅覚』『発想』で100年に一度のチャンスを掴む」と猛烈な煽りである。
そこで、50兆円の内訳であるが、①混合診療の実施で医療業界に10兆円級の「神風」②福祉介護では「特区活用」で離陸する8兆円市場③公立施設の管理委託で2兆円市場、などを中心にして、「出現する事業の種類は数千に及ぶ。その規模は、少なくとも国の一般予算総額の約50兆円程度はあると見て差し支えない。独立行政法人や特殊法人、地方自治体の仕事まで加算すればもっとふくらむ」と述べている。また、「駐車違反の摘発は警察の仕事、所得税の収納は国税庁、刑務所は法務省が運営するに決まっているーという常識はもはや通用しなくなる」ということである。
かつて、東京都が固定資産税課税事務の一部(固定資産税台帳から課税資料作成の電算事務)を民間委託(実質的な派遣業務ー当時は違法)した際に、「そのうち、徴収事務などはサラ金とか山口組等に委託になる」と「冗談」を言った記憶があるが、どうも、本当にそうなってきたらしい。
欧米における刑務所の民営化も、笑い話として聞いていたが、『リポート』によれば、刑務所1所で年間25億円の事業機会であるとしている。山口県美袮市では、経済特区としてPFI方式(契約はBOT方式ー期間20年)で刑務所の建設が進んでいる。NTTデータ・宇部興産G、大林組G、美祢セコムGの三つの企業連合が入札表明して、2007年4月完成予定である。このケースが「市場化テスト」の刑務所のモデルとなるだろう。
この辺は、以下のサイトを参照してほしい。
http//pb.nikkeibp.co.jp
【パブリックビジネス・リポート】(注:2006年12月時点で廃刊)
●指定管理者制度も潜在市場規模は10兆円といわれている。ネット配信の『月刊指定管理者』などを見ていると、現在急速に指定管理者制度は膨張していることがよくわかる。
昨年の6月時点(総務省の12月の報告書)では、指定管理者制度導入の施設数は1550であったが、『グローカル』によれば、今年度はすくなくとも2~3万施設が公募対象になるという。
『平成15年度版公共施設状況調』を基にした三菱総研作成の資料によれば、全国の自治体が所有する公の施設数は、395878施設に及ぶ。保育園約14000、児童遊園4181、児童館4359、老人福祉センター2239、老人憩いの家4540、給食共同調理施設2783、市町村集会施設168704、公民館15912、市民会館2955、図書館2698、博物館・美術館等691、市町村体育館5887、野球場3955、プール4406、墓地34897、都市公園等101000と言った調子である。その他、三菱の調査では、公営住宅、道路、上下水道なども「しっかり」調べてある。
島根県の指定管理者の指定状況を見ると、
平成16年度から17年度にかけて、導入によって6.9億円のコスト縮減になるとしている。
ここには、外郭団体による(つまり、競争によるリストラ)節減分も含まれている。その「仕掛け」は、指定管理者公募の際に、民間に準じた「標準人件費」を示して、委託料の上限額を公表したためである。これによって、従前の第三セクター(県観光開発会社)が解散となり、文化振興財団の職員も希望退職や勧奨退職によって、その職を追われている。
●島根県の場合、人件費を低く抑えることを「前提」とした公募によって、既存の団体にリストラを強制する、或いは、解体を促すということであった。これが「市場化テスト」ともなると「強制入札」となるので、単に人件費の民間準拠(どういう基準にするのか、データはかなり怪しいが)だけではなく、会計制度から、金利計算まで全ての経費計算等において「イコールフッティング」が要請される。
例えば、保育においては、企業会計ではなく社会福祉法人の会計に準じているため、減価償却が認められず、株式会社の参入が困難になっているとか、「官民比較」の方法そのものに「市場」の圧力が加わることになる。
「市場化テスト」と指定管理者制度との関係については(3月27日の備忘録で若干触れたので参照して欲しい)、後者が「競争」ではない(公募≠競争)のに対して、前者は強制入札となり、競争の「単位」も問題になってくる。
どの程度、官民の競争条件を整備・規定するのかは、市場化テスト法の内容によって異なってくる。競争の「単位」を部局とするか、係レベルとするかなども、公務員のリストラの規模に関わってくる。
まさに、パブリックビジネス狂想曲の始まりである。350兆円の郵政預金等の資産の民営化と共に、公の市場化が進行しようとしている。現在の市場化・民営化は、かつての「官=善、民=悪」の裏返しとしての「民=善、官=悪」という単純原理に堕しており、冷静な議論(中国のデモに「冷静」にというだけではなく、小泉首相みずから「冷静」に)が望まれるのである。
●やはり、紙幅が足りないので、別途、展開をしたいが、近日中に城塚健之弁護士『自治体リストラ・市場化をめぐる現局面の情勢と特徴について』をインフォメーション・サービスとしてアップする予定なので(20ページを超える、大論文です)、是非、参照をして欲しい。

