2005年07月16日(土)
郵政「参議院の陣」を考える
●衆議院における郵政民営化等法案の採決が、自民党の51人にのぼる「反対」「棄権」によって、わずか5票差という「薄氷を踏む」状態であったことから、参院における「攻防」が俄然緊迫度を増してきた。
とはいうものの、マスコミにおける郵政民営化に関する扱いは、スポーツ新聞か芸能関係誌の「ノリ」であり、①自民党から何人の「謀反」がでるか②参院における否決によって衆議院の解散になるか③小泉首相の求心力の低下とポスト小泉問題④自民党の分裂問題といった、およそ「郵政民営化」の是非という本質問題とはかけ離れた「ゲーム」感覚なのである。
テレビなども、小泉首相が衆議院とは「うって変わって」丁寧な答弁をしている姿を追ったり、自民党幹部の「締め付け」と「反乱」の攻防という局面を追ったりすることにエネルギーを集中しているようである。
ここに、現代日本のマスコミの「基本性格」がハッキリと現れていることを見ておく必要がある。
端的にいって、マスコミを総動員した郵政民営化を含む「官から民へ」「民営化万歳大合唱」の下で、それにも「かかわらず」今回の事態が発生したことこそが重要なのである。
●今回の「事態」は、根本的には国民の「直感」として、民営化によってユニバーバルサービスが崩壊するのではないかという危機感、それも地方レベルでは過疎化の進行や、地方経済の地盤低下・雇用失業問題など、生活に関わる問題と「一体的」に理解され(更に年金・医療や介護保険などの負担増嵩、消費税率の引き上げ可能性などが総合的に加わる)、様々な局面で「反対運動」が拡大してきたことを「背景」としている。
しかし、ここで強調しておきたいことは、そういった「反対運動」の一般論ではなく、「二大政党制」に近づきつつある現在の政治状況の下での、反対運動→矛盾顕在化→悪法阻止という「経路」のあり方を正確に見定めることの重要性である。
1980年代における「消費税」導入反対運動の際も、自民党内やその支持基盤から反対の大合唱が起こり、自らが支援してきた議員を各団体が「公約」内容に基づいて「詰める」という反対行動が見られた。
これは、労働組合や「革新政党」が「清く正しい」反対運動を行うより、自民党にとっては余程「こたえる」ものであった。
●こういった「身内」の反対行動は、自民党が新自由主義的政策を強化すればするほど、その支持基盤である都市自営業者や農民などの旧中間層が離反する状態を反映したものであるが、この「閉塞状況」を打破する方向で「二大政党制」が指向され、小選挙区制の導入などその「基盤」が整えられてきた。
自民党政権も橋本6大改革を転機にして、経済のグローバリゼーションに対応した新自由主義的政策を追求するようになったが(98年の参議院選挙での大敗北によって大きく挫折をし、小渕・森内閣では一転して財政拡大政策をとったが)、小泉構造改革の流れの中では、支持基盤からの「反対」や「労働組合等の反対運動」などを「守旧派」「抵抗勢力」として排除する方向が意識的に志向されてきた。
これは、基本的には「二大政党制」が確立しつつある政治状況の下で「はじめて」可能な「戦術」なのである。
郵政民営化に引きつけて言えば、民主党は本来的に「官から民へ」という流れが強く、自民党より新自由主義的政策に親和的な政党である。従って、小泉構造改革が「自民党をぶっつぶす」ことになっても、政権交代によって、新自由主義的政策は「無事」に達成することができるからである。
しかし、今回の郵政民営化問題では、民主党内の郵政関係労働組合などの運動によって、つまり身内の「運動」によって、早々と自民党流の郵政民営化に「反対」ということになってしまった。「二大政党制」の下で政権を伺う政党としては、自民党に「対決」する姿を国民に見せる必要があり、「わかりやすい」争点を演出する必要があるわけである。
●こういった事情が複雑に絡み合い、郵政国会はこれまでの国会審議のパターンとは大きく異った事態となったわけである。
小泉首相は、現時点でも郵政民営化を「構造改革の本丸」と位置づけ、妥協なき突破をめざしている。国民から見ると、薄ら笑いを浮かべて、レベルの低い「答弁」を行う様は、一国の政治責任者としては到底適任とは思えないのであるが、財界から見ると、頼もしいナイスガイに見えるらしい。
そこで、話しを「郵政民営化」の根本問題はなにか、という点に移したい。
郵政民営化の問題は、当初、行革会議における「中央省庁改革」問題の一環として議論をされたわけであるが、「基本法」において総務省内の郵政事業庁に移し、公社として「三事業一括」で国(総務省)が管轄することになった。ここでは、民営化へのアプローチとして「郵政三事業における企画立案部門と実施部門の分離」が強調された。
ところで、「郵政民営化」(公社化も民営化であるが、完全民営化)の閣議決定(04年9月)では、民営化の意義について、次のように述べられていた。
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明治以来の大改革である郵政民営化は、国民に大きな利益をもたらす。
① 郵政公社の4機能(窓口サービス、郵便、郵便貯金、簡易保険)が有する潜在力が十分に発揮され、市場における経営の自由度の拡大を通じて良質で多様なサービスが安い料金で提供が可能になり、国民の利便性を最大限に向上させる。
② 郵政公社に対する「見えない国民負担」が最小化され、それによって利用可能となる資源を国民経済的な観点から活用することが可能になる。
③ 公的部門に流れていた資金を民間部門に流し、国民の貯蓄を経済の活性化につなげることが可能になる。 こうした国民の利益を実現するため、民営化を進める上での5つの基本原則(活性化原則、整合性原則、利便性原則、資源活用原則、配慮原則)を踏まえ、以下の基本方針に従って、2007年に日本郵政公社を民営化し、移行期を経て、最終的な民営化を実現する。
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●様々な議論の経緯を経て、上記のような記述になったわけであるが、③に関しては、公社化の際に次のように説明をされていた。
「郵政公社化に伴う改革の特徴として、郵便貯金の大蔵省資金運用部への預託の廃止が挙げられます。現在、郵便貯金は資金運用部に預託され、財政投融資の原資の半数以上を供給しています。財政投融資は国による社会資本の整備のための融資制度で、戦後復興期や高度成長期には民間の金融機関を補完して大いに役立ちました。しかし、現在においては国が資本投下する必要性は薄れているにもかかわらず、郵便貯金の預託などの原資を使わなければならないので、規模が肥大化し民業を圧迫しています。これを是正するために預託は廃止し、財政投融資の原資は市場原理により調達することとなります。また郵便貯金の運用は一括して行われることになります。」(中央省庁等改革問答集)
平たく言って、郵政民営化のこの面での「問題」は、公社化によって、既にクリアーされているわけである。
②は、最近の資料では、年間4900億円の税等を納入する「らしい」ということで、トヨタなみの税収寄与という「宣伝」になっているが、後述予定であるが、これはあくまで「出発点」の話しであり、後々まで多額納税が予定されているわけではない。反対に、不良債権などを押しつけられ、ボツにされる可能性も否定できないような存在となることが予想されるのである。
確かに、資本金50兆円レベルの株式会社の株を上場すれば、タイミングがよければ、かなりの収入になるだろうが、これとて、国家財産の切り売りであることは明確であり、現在、総合的に黒字であり税を投入しないで運営されている点を考慮すれば、やはり国家財産の資本による横領行為としての本質は変わらない。まあ、この②は「屁理屈」だと政府もわかっているハズなので、これ以上、議論をしない。
さて、①では、四事業の「分割」について何も述べていない。つまり、潜在力の発揮や、経営の自由度のことだけが述べられているだけである。これは大変な欺瞞であるが、結論から言うと、今回の郵政民営化の「本質」中の「本質」である「郵貯の民営化」とこれを保障するための「四事業の分割」を、国民の利便性によって、「説明」することができない「限界」を示していると理解しておこう。つまり、郵政民営化の本質は、国民に正面から説明できない内容なのである。(つづく)

