2005年05月30日(月)
公務員給与削減大合唱
【急いで書いたので、未定稿です、精査して修正します】
●公務員給与のあり方に関する研究会「中間報告」について①を書いておきながら、②を書いてないことが気になっていました。
今回は②というより、最近の公務員給与削減の大合唱について思う所を述べて見たいと思います。
5月24日の経済財政諮問会議において、民間議員から「政府部門の総人件費削減に向けて」という文章がだされました。その内容は、①今こそ人員削減と配置の見直しを②公務員(国・地方)の給与体系・水準の見直し③公的部門全体の人的コスト抑制を④今後の取組みということで、かなり「乱暴」な議論になっています。
これを「迎え撃つ」ハズの総務省は、「国・地方公共団体の総人件費削減に向けて」ということで、国家公務員人件費については、5年間で10%以上の定員削減(警察は増員させる中で)、地方支分部局の事務事業の見直し、人勧を活用した「給与構造の基本的見直し」を打ち出しています。
また、地方公務員については、「新地方行革指針」に基づいて、総定員の4.6%以上の純減(今後、5ヶ年の集中改革プラン)、給与制度・運用・水準の適正化、給与構造の見直し・地域民間給与のより的確な反映、給与情報の公表システムの17年度中の構築、などを打ち出しています。
更に地方公務員の人件費抑制は「住民自治を原動力」とする旨の記載があります。つまり、住民からの「地方公務員給与抑制」の世論を拡大して、この勢いで、給与抑制を行うという意思表示でしょう。
●「地方公務員の給与のあり方に関する研究会『中間整理』」などは、一応「冷静」な議論が展開されており、一方的な「攻撃」という雰囲気は弱いわけですが、今回の経済財政諮問会議の議論は、全く異なった雰囲気になっています。
それと言うのも、今年の人事院勧告において、給料の5%削減と現行調整手当の「地域手当」への再編が打ち出されることが「確実」なためでしょう。そうすると、地方公務員給与についての冷静な議論はすっ飛んでしまって、国に準ずるかどうか、という不毛の政治的な議論に収斂されてしまうわけです。つまり、①国と地方の給与の関係をどうみるか②地域の民間給与の把握の仕方と地方公務員との比較の方法③これまで、総務省(旧自治省)が主張してきた「国公準拠」などの議論をどうみるのか、などを真面目に議論する余地がなくなってしまうということが危惧されます。
国の5%削減を地方に横引きすると、北海道・東北などは5%の給料水準の引き下げがもたらされ、東京は得するかというと、やはり5%の水準引き下げがあり(つまり年金や退職手当にモロに響く)、その上で「地域手当」を現行の調整手当12%から最高18%程度まで引き上げるということになります。
国の場合、「転勤手当」など新設され、一定の激変緩和措置がありますが、地方公務員の場合は、最初から同じ地域にいますから、こういった緩和措置も難しいのが実態です。
●確かに、現在の地方人事委員会の勧告、官民比較の調査などに問題がないとは言えませんが、先にのべた①~③などの議論をキチンと行い、労働基本権が制約されているという公務員の実情を踏まえた議論が必要でしょう。
大阪市の「職員厚遇問題」などを口実にして、反公務員や公務員給与引き下げ合唱に「乗って」議論を進めることは、適切ではありません。
もし、本当に、地方公務員の現在の給与が、著しく合理性を欠き、民間の比較対象になる労働者の給与より高いというのであれば、「冷静」な議論を行った上で、より適切な比較の方法をとり、場合によっては、引き下げることもあり得るでしょう。
公務員の給与と言っても、例えば、初任給などは、民間と比較しやすいものですが、これは民間の初任給が市場による労働の需給に依存しているものを、殆ど横引きをしたものです。ですから、民間に比して、明確に「低い」ということになれば、公務員を採用すること自体が困難になるのは自明です。ですから、5%引き下げといっても、実際には、中高年の給与をこの際引き下げる方向が示唆されているわけです。
●これまで、総務省は、地方公務員の給与については、国公の給与が「民間準拠」によって、民間と均衡しているので、生活費などの問題もここに含まれているハズであり、従って、国公と「均衡」させることによって、地方公務員の給与も適切なものになると主張してきました。同時に、「小規模な市町村にあっては、・・・ラスパイレス指数の値が80~90であっても、適正な水準である場合があるので、直ちに低い給与とはいえないものである」として来ました。『地方公務員給与制度詳解』は、この理由として、
①国と比較して給料表の等級数が少ない
②民間の企業規模別の給与水準を見ても小規模企業の水準は低い
③物価の地域差指数をみても小規模団体の地域の水準は相対的に低い
④一部の大都市を別にして、国公の給与水準は地域民間賃金より高い
などのことをあげています。こういったある意味「原理的」賃金格差を容認しておきながら、なんで1960年以来「国公準拠」を連綿として主張してきたのか、この立場の総括が要求されます。こういった議論の他、この『地方公務員給与制度詳解』には、「地方公務員法第24条第3項には、『他の地方公共団体の職員』の給与も(考慮の対象ー行方)掲げられているが、すべての地方公共団体において国に準ずる適正な給与決定がなされていれば、他の地方公共団体の職員の給与との均衡はおのずと維持することができよう」と述べられています。
この『地方公務員給与制度詳解』は地方公務員給与制度研究会の編著になっており、私のような者が書いたのではなく(笑い)「自治省行政局公務員部給与課内」と書かれているように、旧自治省の「公式」な見解です。
●低い地方の小規模団体の給与を引き上げてよいのか、引き下げるべきなのか、右往左往しそうなシロモノですが、公務員給与のあり方に関する研究会でも、全く同じレベルの議論を十年一日のごとく繰り返しております。
旧自治省(現在の総務省)は、地方公務員法の解釈権を握って(これに疑問を持たない学者の支援も得て<笑い)、勝手に「均衡の原則」なるものを仕立て上げて、議論を進めて来ましたが、これに対する批判は「公務員給与のあり方に関する研究会『中間整理』について①」で述べておきました。
地方公務員の給与については、「給与以外」の労働条件を国等と「権衡」させる規定とは異なり、国等の給与を考慮するものとなっています。率直に読めば、これは地方公務員の給与についての決定の「柔軟性」(地方自治と給与決定のあり方についての議論と言い換えることも可能)を認めているわけです。
職務給の原則を導入しつつ、まず生計費(ここには、地域の特性も含まれます)を強調していることは下記の条項を見ても、明確でしょう。
●△●△●△●△●△●△参考●△●△●△●△●△●△
*24条3項「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。」
*24条5項「職員の勤務時間その他職員の給与以外の勤務条件を定めるに当つては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。」
●△●△●△●△●△●△参考●△●△●△●△●△●△
●職務給の原則から言えば、規模が小さいからと言って、また、大都市部ではないからと言って、給与が低くても良いということにはなりません。だから、総務省は「国公準拠」だと言ってきたハズです。この立場からみれば、国公の給与を5%引き下げる場合、地方の給与は引き下げることになるハズですが、なぜ、ことさらに「地域民間給与の反映」を今になって強調するのでしょうか。
国公の給与抑制は、人事院勧告を踏まえて、その水準についてはのべておらず(民間議員は、勝手な議論をしていますが)、定員の削減=総人件費削減という手法ですが、地方の場合は「地域民間給与のより的確な反映」となっており、「より」が入っていることで、過去の主張との連続性を示唆しているということでしょう。しかし、地方の人事委員会勧告の意義を軽視していると言わざるを得ません。しかも、一般市町村の場合は、人事委員会も労働基本権もないわけですから、ILOの場で政府は、「代償措置がない」という指摘に困惑せざるを得なかったわけです。
市町村が、国の給与制度と同様の構造の中で、その所在の「県」の人事委員会勧告を参考にして、給与を決定することは(しかも給与は予算措置の中で、議会も関与して決定されています)、当然の話ではないでしょうか。
●民間議員の議論を見ると、人勧についても、能力主義的な給与への転換と同時に、①小規模企業の反映②民間の雇用構造や組織構造の反映をするように要求しています。
ここがポイントでしょう。
要するに、現在の給与決定制度を通じて、地方公務員の給与を引き下げることはできない、つまり、地方人事委員会の勧告がデタラメだったという以外にはやりようがないわけです。
確かに、地方人事委員会は、調査で官民の格差に逆格差が生じた際も、「国並み」を勧告したこともありました。また、地方によって、調査対象にも偏りがあったことも否定はできないかもしれません。しかし、勧告をベースにして、しかもラスパイレス指数で国よりも地方全体が低くなっており、地方においては、かなりの「格差」が既に存在をしている冷厳な事実をどうみるのか。
政治的に「これ以上、引き下げろ」という議論以外の何物でもありません。
職務給は本来、「同一労働・同一賃金」ですから、国も地方も一般の職員については、職務が同様であることから(まさか、国の一般職員は、地方の職員より、より困難な職務を遂行しているとは主張できないでしょう)、同じ給与であっても問題はないわけですが、既にラスパイレス指数が低いことは、旧自治省も述べていたように地域の給与を反映しているからです。これは、生計費が「低い」ことを反映しているとも言えます。
ここから先は、労使の「力関係」や地域における住民の理解の度合いによるわけで、それ以外の、政治的な圧力を認めるわけには行きません。現時点で、労働基本権を付与しても、ストライキの行使などで賃金が上がるとも思えませんが、「スジ」を通した議論が必要でしょう。
まだ、色々と言うべきこともありますが、機会を改めて論ずることにします。

