2005年12月15日(木)
菅沼栄一郎『村が消えた―平成大合併とは何だったのか』
●『自治と分権』22号(2006年1月発売)の書評に、菅沼栄一郎『村が消えた―平成大合併とは何だったのか』を取り上げ、概ね以下のようなものを掲載予定です。大したものではありませんが、以前、この菅沼さんの「市町村合併の中間総括」を批判的に検討したものを、このブログに掲載したこともあり、その「続編」としてお読みください。
*****************************************************
「寝っ転がって読んで、2時間で平成大合併がわかる本を書いてくれ」という要望に応じて書かれたというが、なかなかどうして、熱の籠もった議論が展開されている。
新しい市町村の誕生や、合併が不成立に終わった経過などを、新聞社の取材力を活用して読み飽きない実例で紹介をしている。私ども研究機構でも『自治と分権』やメルマガなどで、紹介してきた事例もかなり含まれている。「南セントレア市」で合併自体が失敗したケースなども、メルマガでこれを名古屋読みすると「南セントリャー市」になるとか紹介した記憶がある。
改めて、こういった事例を集大成すると、平成大合併の本質に迫ることが可能になると実感をした。「村が消えた」という本の表題については、営業的な部分もあるのだろうが、平成大合併の本質の一端を表す「適切」な表題であろう。小規模市町村の「非自治体」化や、財政危機を煽り不安をかき立てる「合併促進」などの手法が想起される。
「平成大合併は、村が消える過程でもあります」と述べられ、2006年3月末には、568あった(99年3月末)村が198に減少することが紹介されている。また、198の村のうち、今後も合併をせず、単独で生きていくと断言する村はほとんどありません、とも述べられいる。実に、平成大合併の本質を突いている。
兵庫県と香川県は昭和の大合併で、既に村はなく、これに今回の平成大合併によって11県の村なし県が加わり、合計で13県が「村」のない「無村県」となるという。
この本には、適所に野中広務、松島貞治、後藤田正晴氏などへのインタビューが挿入されており、これだけでもかなり充実をした読み物である。村の問題では、長野県泰阜村の松島貞治村長へのインタビューは考えさせられるものがある。
村の仕事を一部放棄し、県や広域行政に委ね、村で行うべき福祉は守るという発想は悲壮ではあるが、現下の情勢ではやむを得ないものだとも思う。「行政規模は、やはり小さい方がいい、といわれる時代がきっときます。その時までがんばりたい」という決意に注目したい。
平成大合併は、グローバリズムの下での地域の再編過程でもある。平成の大合併は、小規模市町村の消滅だけではなく、特例市、中核市、さらには政令市の誕生も一大特徴である。この点への目配りが欠けているのが残念であるが、全体として読んで損にはならないことを保障できる。
*****************************************************
確かに「気楽」に読める本です。「はじめに」では、「今度の平成の大合併が、過去の二回と決定的に違うのは、中央政府から自治体への分権の転機にあたり、行政が縮小していく過程でのできごとである点です」と述べられて、明治や昭和の合併との差異が指摘されています。
この行政の縮小の問題に関わって、泰阜村の問題や、いわゆる「西尾メモ」(地方制度調査会における提起)が、「地域自治組織」のあり方の問題として提起されています。この辺は、微妙な問題がありますが(編集子としては、あまり評価出来ず、事実関係の整理をもう少しする必要も感じます)、問題提起として読むことができます。
この著作の一番の「問題点」は、書評にちょっと書いたグローバリズムとの関係で市町村合併→自治体再編問題を捉える視点だと思います。
国家が自治体と国家連合の「上下」に分解していくような話しは、神野直彦さんも行っていますし、また、この著者もそういう認識に立っているようです。しかし、著作で唯一の紹介は「海外の市町村合併問題」であり、三つのグループに分けられるという柏原さんの議論だけです。
日本の地域再編が一体、何を根拠として実行されようとしているのか、ちょっとこの著作からは読み取れません。
これが、認識上の問題なのですが、今回の著作は、前回少し批判をした行政の民間化と地域再編が同時に進行してることは、上記の「地域自治組織」や行政の縮小という問題で、ふれています。
これも、もう少し「統一的」に把握されると、シッカリとした認識フレームが確立されると思われます。
しかし、だからと言って、この著作が「駄目」ということもないのです。「村が消えた」という象徴的な表題は、気に入りましたし、今回の合併問題の本質に迫る捉え方だと思います。
そいうわけで、『超』おすすめという本ではありませんが、2時間(ではちょっと無理?)で読める「気楽」な本という意味で推薦をした次第です。
皆さんも、ご自分なりに、楽しみながらお読みください。

