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 2006年10月04日(水)

北朝鮮の核実験実施声明の見方

●以前、このブログに「浅井基文HP掲載の『北朝鮮のミサイル発射についての視点』を読む」という短評を書いたことがあるが、その際、北朝鮮をめぐる事態の見方について「過激」というご評価をいただいたことがある。読み直して見て、訂正する部分は基本的にないし、アジアにおいて日本の方が北朝鮮より危険な国家だと見られていることも変わりない。より、正確に言えば、歴史認識・靖国参拝など、日本が引き起こした人類史上最悪の侵略戦争に対する反省がキチンとされておらず(安倍内閣のこの間の答弁でも、村山・小泉内閣時の声明や見解を「日本政府の正式考え」として「紹介」するにとどまっている)、人類初挑戦とも言える「非武装平和」を求めた日本国憲法を「改正」しようとしている姿勢が、「危険」であるという認識である。

 さて、北朝鮮は10月3日に「科学研究部門で今後、安全性が徹底的に保証された核実験をすることになる」という声明を(外務省が)発表した。この「核実験実施言明」の声明はこれまでで、初めてのことである。このことに関し、テレビ、新聞などのマスコミは一斉に「その背景」について、「解説」を始めている。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆記事引用☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 【ソウル3日時事】朝鮮中央放送と平壌放送が3日午後6時の臨時ニュースとして報じたところによると、北朝鮮外務省は同日声明を発表、「自衛的戦争抑止力を強化する新たな措置」として「科学研究部門が今後、安全性が徹底的に保証された核実験をすることになる」と宣言した。北朝鮮が2005年2月の核保有宣言後、核実験を行うと公式に表明したのは初めて。具体的な実施時期や内容には触れていない。
 7月のミサイル発射で米国を中心とした制裁の動きが広がり、国際的な孤立を深める北朝鮮が、米国などから譲歩を得る狙いで、瀬戸際戦術をさらに一歩進めた動きとみられる。米国の対応次第で核実験に踏み切る姿勢を示したもので、米朝を軸に国際社会の緊張がさらに高まる可能性が高い。 
(時事通信) - 10月3日23時1分更新
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆引用終わり☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 とりあうのがばかばかしい議論は省略して、主として
①アメリカ等の金融制裁(中国もこの間のテポドン、核兵器開発問題を通じて、金融制裁を始めている)の解除を狙う、「瀬戸際政策」ではないか。
②同時に、らちのあかない6者協議ではなく、アメリカとの直接交渉のカードを切ったのではなではないか。
③失敗したミサイル実験にすら「過剰反応」をした日本政府は、「経済制裁」や「あの程度の対応ではすまないだろう」という見解を述べていた(安倍首相へのインタビュー)。実際、ミサイルに関する安保理事会の声明は、ミサイル実験そのものへの非難は行っておらず、核問題が中心であり、ミサイルはそれに「付随」する問題として、実質的に扱っていたから、北朝鮮が核実験を行えば、安保理事会における非難決議などは、かなり強硬なものとなることは予測がつく。

●さて、実際問題として、北朝鮮の核実験実施への声明の本質は、何か。マスコミが「外交カード」であるとか、経済支援の引き出しなどと関連して報道しているが、まず、押さえられる必要があるのは、北朝鮮の現在の政治体制の「善し悪し」は別にして(私は、狂った独裁国家だと思っているが)、「核兵器を持ち、それが使用できることを証明しなければ、国家として維持不能である」という認識がベースだということである。
 イラクやアフガンはどうだったのか。イラクは「多量破壊兵器の保有」の「疑い」だけで、圧倒的に優勢な米軍や英軍に侵略され(独裁者フセインはその余波で失脚、捕捉)、国土は滅茶苦茶にされ、高度なメソポタミア文化の遺産にも重大な損害をもたらした。国民は数万人が死傷し、侵略した米軍も、9.11テロによる被害者を上回る、主として貧困家庭出身の若者の「死」をもたらした。
 その後、アルカイダとイラクとの関係も米議会等で正式に否定され、侵略戦争の「大義」は全て、崩壊した。日本では、今国会で安倍首相は、「大量破壊兵器の存在について、当時、それを確信する確かな判断があった」とのべ、米軍に追従してイラクに派兵を行ったことについても、全く反省を示さなかった。これはブッシュやブレア以下の対応であり、金魚の「糞」が金魚の頭より、優れたものではないという当然のことを証明した。
 こういった、アメリカのやり方を見ていれば、小学生でも、アメリカに侵攻される可能性のある国であるならば、インドやパキスタン、イスラエルのように核兵器を持ち、現実にそれを使用できることを天下に公表する以外ないと思うであろう(イスラエルは公表していないが)。

●前のブログで、北朝鮮が実際にミサイルを使用する可能性があるのは、先制攻撃を北が行うというケースはまず考えられず(完全な自滅路線)、アメリカが日本の基地を使用して北を攻めた場合に、国際法上の「権利」として日本の基地を攻撃するというパターンが一番可能性が高い。否、このケースしか具体的には考えられないだろうと述べた。これは今でもそう思っている。
 そこで、安倍内閣が志向してる憲法改正、特に集団的自衛権の問題について考える必要がある。日米軍事同盟を現在の片務的条約から英米関係のような「攻守同盟」にした場合、どうなるか。
 イラク戦争開始の際も実際に存在したことだが、イギリスのブレアは、イラクの大量破壊兵器がイギリスに数分間で飛んでくる恐れがあると言明した。この言明自体、アメリカがイラクに先制攻撃を行う「口実」になりうるものであった。こういうものが「攻守同盟」である。
 日本とアメリカの関係を考えてみよう。もし安倍首相が「北朝鮮の核兵器=テポドンが7分後に日本に飛んでくる可能性が強い」「そういう危険性が強い」と訴えた場合、アメリカは直ちに、全面的に北朝鮮を攻撃する可能が大である。そして、仮にテポドンが飛んで来なくても、アメリカの攻撃は実施され、今度は、その攻撃に対して、北がミサイルを日本の原発や基地をめがけて発射する可能性が出てくる。これはかなりの確率になろう。

 現時点で、北が核実験を行ったとしても、それを運搬する手段=ミサイルは存在しない。まして、アメリカまで核兵器を撃ち込む能力は皆無である。
 北の核兵器保有や使用への具体の手段の確立については、ロシアや中国も猛反発をするだろう。北が外交的に孤立し、経済支援やエネルギー支援を断たれることも予想される。北にとっては、その意味で、今回の声明は「瀬戸際外交」であることも事実であろう(特に夏から秋にかけては、毎年食料不足が指摘されている)。

●問題は日本の姿勢である。北が失敗に終わったテポドンの発射を行った際に、国連で非難決議をあげるために「大奮闘」した。しかし、核兵器を発射できるミサイル実験をその後インドが行った際は、何も問題にしなかった(北のテポドンやノドン、牛ドン?は、核兵器を運搬できない)。こういったダブルスタンダードによる外交は、結局、中国や北朝鮮を敵視し、アメリカの核の臨界実験や、ミサイル実験(頻繁に行い日本も協力)には何も言わないという、対米従属性を世界に示すだけである。
 国連の常任理事国になろうなどとは、全くおこがましい限りである。国連は、バランス感覚のない国を常任理事国にするほど、国際的無感覚に毒されていない。小型飛行機に乗ったことのある人は、知っていると思うが、搭乗の際に、記入するのは、年齢でも性別でなく、「体重」である(笑い。当たり前であるが、右側だけに、重い人間が乗れば、飛行機は右旋回するわけである(合掌。だから、パイロットは、申請した体重と見た目の体重の「真偽」を自分の目で確かめつつ(笑い)、座席を指定する。

 日本が行うべきことは、日本国憲法の視点に立って、まずは核兵器の「全廃」という、どの国も否定できない国際的な世論を高揚させることである。
  また、北朝鮮で核実験が行われれば、北だけではなく、イスラエルやアラブの戦争の形態の変化、テロ組織への兵器や知識の流入などが、時間の問題になろう。アメリカの対テロの戦争も、全く、現状と異なるものになるだろう。アメリカをはじめとした大国の「核兵器独占」が、現実的には「核兵器の拡散」を招くという背理の究極の到達点である。
 もう、単純に「非対称」の戦争と言えない局面もで来るだろうし、それを阻止するために、あらゆる民主主義が否定され、個人や情報の徹底した管理が行われるように「ならざるをえない」だろう。地球上の60億人の人間の指紋や動向を管理し、「怪しい人間」を有無を言わさずに「しょっ引く」体制の確立へと進むであろう。現に、これがアメリカのテロ後のスタンスなのである。
 そこで、日本は武器(或いは技術)輸出の禁止や、各国の非核三原則の確立などに尽力すべきことになる。唯一の被爆国として、日本は単に原爆を落とされた被害国という立場にとどまらず、その悲惨な現実をベースにして、加害国にならないように、全ての国に訴える必要があろう。

●さて、これからどうなるか。大変な流動的な国際情勢になってくると思うが、北を国家として認め(先ほど述べたように、狂った独裁国家ではあるが)、6者協議のフレームの中で、日本の果たすべき役割を明確にすることであろう。これが発展する中で「拉致問題」は何らかの「前進」を見るだろう。
 安倍首相の本質はナショナリズムと新保守主義であるが、日本のGDPの数百分の一の北が攻めてくるとか、餓死すら頻繁に起きている国が飽食の日本と戦争できるなどという議論は笑止であろう。こういった、レベルの低いナショナリズムは、海外からは相手にされないが、国内では一定の「成功」を収めていることも事実である。これを本格的な大国ナショナリズム=排外主義に発展させるようなことがあれば、国際平和にしめる日本の役割は決定的に死滅する。

 日本が海外で戦争しない、出来ないように、集団的自衛権の確立(改憲、解釈)を阻止し、ナショナリズムの「高揚」に向けた、教育基本法「改正」に反対し、東アジアの「和」「協力」こそが、国際の平和の要諦であることを明確にすべきであろう。こういったことを踏まえて、北朝鮮の今回の核実験実施への声明に「正しく」(過剰ではなく)対応すべきであろう。