2006年01月02日(月)

『自治と分権』第22号余話

●あけまして、おめでとうございます。
 まだお正月なので、軽い話題で行きたいと思います。そこで、『自治と分権』第22号余話ということで。

 秋田県「新」湯沢市の鈴木市長へのインタビューは、かなり前から「やってみたい」と思っていました。私どもが「北東北広域連携政策」に興味を持って研究会を始めてから、湯沢市へは何回かヒアリングや調査に伺っており、その度に「何で当選をしたのかな?」という疑問が強くなりました。

 これまで、共産党員が首長になるということ自体は、全国にそれなりの数があるわけですが、色々な事件など「伏線」があるのが普通でした。
 例えば、東京都狛江市の矢野市長は、前市長のギャンブル失踪事件が契機になって誕生しましたし(その後は、激戦を重ねて、実績に基づく当選を重ねていますが)、兵庫県南光町(現在は合併で佐用町)の山田前町長などは、解同問題が契機になっていたという具合です。

 ところが、旧湯沢市の場合は、前市長に別段大きな「失政」があったわけでもなく、むしろ、結構堅実な財政運営を行っていました。やりようによっては、温泉や養護施設、病院(移転)などを総合的に配置した「ユ(湯)ートピア施設」建設などが財政ネックになる可能性もありましたが、調べてみると、これも財政的にそれほどの負担になるわけでもなく、「まあ、結構使えるのでは」という感触だったのです。ですから、余計「何で当選か?」という疑問が拡大したのでした。

●鈴木市長さんが、旧湯沢市の市長に当選した頃(3年前)は、深刻な不況が続き、駅に近い商店街のデパートが二つとも倒産して、閉鎖されておりました。駅前の商店街もいわゆる「シャッター通り」になっていて、「これは大変だな」というのが第一印象でした。市の庁舎の前には、「雇用対策本部」という看板がかかった木造の2階建ての「庁舎」があり、青年は地元に就職の機会がないという話しなどを伺いました。

 それで、選挙の政策などを色々と調べていると、もちろん、福祉には力を入れていましたが、それ以上に「地域産業興し・地場産業の育成」「まちづくり」「雇用対策」など、要するに地域が生きてゆくのに必要な活力を育成する政策が目立ちました。
 湯沢市は、農業はもちろんですが、酒造業や漆器などの産業が力を持っており、この潜在力を活かせば色々な可能性があるように思いました。また、今回、泥湯温泉で事故が起きてしまって大変に残念なのですが、全国的にみても、「秘湯」という温泉が数カ所あり、これも、一般的な「観光」以上のポテンシャルを持っていました。

 恐らく、こういった潜在的な地域の力を、誰が一番引き出してくれるのか、そういう思いが住民の中にあったと思うのです。

●湯沢市で、驚いたことは、合併問題でした。市長もインタビューで「まさか自分が合併の取りまとめまでやることになるとは思わなかった」と述べておりました。事情を知らないと、「何で、共産党員の市長が合併で他の自治体に呼びかけたりするのか」と疑問に思う方が普通だと思います。
 合併問題では、元々は合併促進の決議などには共産党の市議は反対した経緯があるのですが、住民アンケートを何回か行う中で、合併への期待がかなりあることが事実として分かった後は、「どういう形で合併をするのか」という方向に転換をしたのです。
 共産党の市議の方に、この話しを伺ったのですが、「合併問題は、住民が決めること。住民が合併を望んでいれば、よりよい合併に向けて共産党が努力するのは当たり前」という回答が帰って来ました。「いや~、これは腹が据わっているな」とこちらが驚いた次第です。
 
 しかし、合併を促進して、新湯沢市の市長選挙で落選した場合、何のために努力したのか分からなくなってしまうなということもあり、昨年の4月の市長選挙の前に、またまた、湯沢市を訪問し、鈴木市長の選対本部にお伺いをしたのでした。

 出足早く、基本政策や選挙体制も組まれていたので、良い感触はしましたが、それでも、合併後の選挙で当選できるかどうかはかなり「疑問」に思っておりました。ところが、共産党の議員の方に、その辺を何気なく聞いたところ、「二期目だし、当選すると思いますよ!」とかなり「断定的」なお話で、こちらの方がビックリしてしまいました。しかも、新市の選挙なのに「二期目」という認識には、更にビックリ。

 ただ、何回か伺って、大変に良く住民の生活実態を把握されているし、何よりも、地元の保守の方たちの要求を良くまとめて、信頼をされていることは大したものだとは思っていました。

●そこで、合併の話しを色々と伺いました。雄勝町は小野小町の出生地で知られ、小町祭りとか文化の香りが豊な町ですし、秘境の温泉もあります。稲川町は「稲庭うどん」などで有名です。湯沢も酒米や酒造では秋田一、全国屈指の地方です。
 話を伺っているウチに、もし新市長に当選したら、「各町村の良いとこ取りで、国盗り物語じゃないかぁ~」と思うようになりました。なるほど、これなら、合併で各市町村の潜在力の相乗的な発揮ができるかも知れないと思うようになり、地元の共産党の議員の方たち(当時、湯沢市で3人)が自信を持っていることが理解できました。

 まあ、こんな「背景」を踏まえて、『自治と分権』のインタビューをお読みいだければ、市長の「言外」の含みをより理解できるのではないか、と思います。

●ただ、昨年の10月に行われた新湯沢市の市議選は、実は共産党はちょっと失敗をしました。定数が減ったので、大変な選挙だったのは事実でしょうが、候補者の何人かが落選をしてしまいました。現在の「疑問」は、この「原因」です。しかし、『地方自治』というのは、奥が深いものだ、というのが実感です。

 現実の市政はなかなか大変ですし、私がインタビューでいきなり「自殺問題」などを切り出したように、住民の現実の生活は大変です。農業も政治の変革なしに「展望」はありません。
 鈴木市長は、政治的には無理をせず、住民の目線で対応する姿勢ですが、住民の中には、極めて積極的に入っておられます。この姿勢が続く限り、色々な困難があっても、「住民力」で地域を発展させる方向を切り開けるのではないかと、期待をしております。

●と、インタビューの話しだけで終わってしまいましたが、今年もよろしくお願いいたします。

湯沢市絵灯籠