2005年04月15日(金)

『自治と分権』第19号余話

●『自治と分権』の19号(2005年春季号)が発売になっています。首長インタビューは、増田寛也・岩手県知事にお願いを致しました。

 このインタビューをはじめて14回目になりました。その主旨は、現在の自治体の首長が、一体何を考え、地方自治をどういう方向にもって行こうとしているか、直接伺って、今後の自治体のあり方を、様々な視点から考える素材にしよう、というものでした。
 
 高知県の橋本大二郎知事からはじめて、市町村→県知事という順序をできるだけ維持するようにしてきました(都道府県は、47しかありませんし、石原東京都知事など死んでもインタビューしたくないので、実際には市町村の首長へのインタビューが主流にならざるをえませんが)。

 14回を数えて、全体としての印象は、「地方に大変な人材が育ってきた」「色々と批判をされても、クビ長というのは、逃げることのできない責任があり、実によく物事をみているし、考えている」ということでしょう。
 一昔前では、考えられないことだったと思います。

●さて、増田知事ですが、「改革派」を代表する論客です。お話を横で伺っていて(インタビューは三橋代表委員=静大教授です)、いくつか印象に残ったことを述べておきます。当然ですが、インタビュー内容は、印刷されたものが「すべて」であり、ここで「裏話」をするようなことはありません(笑)。

☆一つは、「三位一体の改革」の中での、義務教育費の一般財源化を全国知事会が要求したことに関してです。義務教育は国の責任であるとか、一般財源化すればお金がほかに回ってしまう、自治体の財政格差が教育に影響をもたらす、などの「反対」議論が知事会でも多く出て、最終的にも反対者が出ました。「改革派」として知られ、『自治と分権』でインタビューもおこなった、片山鳥取県知事なども、昨年までの「総量裁量制」(教員の定数×給与の総額の中でのやりくりを認める方式)導入によって、かなり使い勝手が良くなっているので、補助金では駄目ということはない、という意見を持っておりました。
 
 増田知事が、前梶原全国知事会長(前岐阜県知事)の片腕として、全国知事会の三位一体改革への要求をまとめたことは、その筋では、よく知られているので、この問題に、どうお答えになるのか、注目をしておりました。
 地方間の財政格差による教育の格差の心配について、「全部地方に移譲することになると、財政の貧乏なところでは、全部措置しきれるのか、ということで不安が多い。ここは突き詰めて言うと、『国は本当に約束を守るのか』『文科省が本当にそこまでやってくれるのか』という信頼感の問題です」「私が決定的に『これは駄目だな』と思ったのは、1年前の退職手当の一般財源化でした。私は、こういうところこそ文科省がきちんと手当てをするべきだと思っていました・・・」「今後明らかに退職者が多くなって、財政負担が一気に膨れ上がるだろうということで地方に移したのでしょう」「地方側が一般財源化の案をまとめたら、『いやいや、国が措置するほうがいい』というわけです」「要するに、給与費が一般財源化されると文科省は『もう何も残らない』という思いがあるのです」と述べられました。

 義務教育費の財源について、一般財源化した場合の『不安』は、当然に多くの自治体にあるでしょう。同時に、増田知事が文科省を批判されたように、国に何をされるかわからないという『不安』も、それ以上のものがあるわけです。現在の自治体の雰囲気を実によく反映した、ご意見だとつくづく思いました。

☆第二は、県立病院や高校の「再編」の問題です。岩手県の教育委員会にヒアリングでお伺いした際に、「高校の再編・統廃合についてお伺いしたい」と言ったところ「再編・統廃合」ではなく「整備計画」です、とかなり硬直的な対応をされました。お話そのものは、大変に丁寧にお教え頂いて、それはそれでよくわかったのですが。
 増田知事は「これは最初から覚悟していますが、実はたいへんお叱りをいただいています」と率直にお話になりました。別に、現在進めている病院や高校の再編(整備計画ですか)に、理解を示すわけではないのですが、「では、どう対応するのか」というオルタナティブがなければ、どうにもならない課題でもあるのも事実でしょう。
 知事は、過疎地域の医師問題の深刻さを訴え「小泉総理や永田町の人たちにはなかなかご理解いただけないかもしれない」と語気を強めました。
 
 釜石の市立病院廃止問題なども、国が勝手に「医療圏の中で、病床過剰地域」と指定していることから、話しが始まっているわけです。県の責任も大きく、「県主導のリストラ」と指摘する向きも多い状況ですが、市は30億円を超える累積赤字、県は100億円を超える病院会計への繰りだしを「放置」できない、財政状況は確かにあります。
 こういう中で、住民と共に、どういう政策判断をするのか、その内容が問われているのだと思います。ここは、自治体職員や労働組合を含めて、その政策能力が問われるところでしょう。

 もちろん、1人1人の市民に財政の責任などないわけで、要求から出発する運動に躊躇いをもつ必要はまったくありません。この点は強調しておきたいですね。

☆第三は、今後の岩手県の「生き延び方」、発展についてですが、財政の困難や市町村合併による「合理化」なども必要であると述べられましたが、その際に、長野県の栄村のように「国の補助金に頼らない独自基準の『田直し事業』や『道普請』など・・・そういう工夫はどんどん採り入れたい」と。
 『自治と分権』のインタビューで、栄村の高橋村長には、この辺のお話を伺ったのですが、岩手で栄村の話しが出てくるとは思いませんでした。
 やはり、国に対して要求すべきは要求しつつ、独自の努力は必要です。栄村の福祉の村づくりは、下駄ばきヘルパーの話しなど、感動を覚えた記憶が蘇ってきました。


●今回の『自治と分権』では、憲法問題で小田実さんに私がインタビューしました。このこともふれようと思っていましたが、また、後日を期したいと思います。9条の会の平均年齢に触れられた時は、思わず笑ってしまいました。
 しかし、何時までも老人をこき使うわけには行きません。幸いに、自治労連も、組織内で全国各地の自治体関係の9条の会のネットワークを作る方向らしいので、若い力に期待をしたいと思います。