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 2006年07月15日(土)

浅井基文HP掲載の「北朝鮮のミサイル発射についての視点」を読む

●浅井基文氏のHPに掲載されている「北朝鮮のミサイル発射についての視点」が話題になっている。かなりの部分で浅井氏の見解に賛同できるので、これを紹介し、少し、今回の北朝鮮のミサイル問題を「国内世論」との関係で考えておきたい。
 なお、そのスジでは注目されている「きっこの日記」にも、このミサイル問題について、サッカーW杯のジダンの「頭突き」と対比させた一文があったので、「本当にヒマ」な方はこれもお読み頂きたい。但し、「きっこ」さんは、なぜか北朝鮮嫌いで(私も好きではないが・・・)、浅井氏の見解とは異なるが。 http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=338790&log=20060713
 
******************浅井基文氏のHP*****************
「北朝鮮のミサイル発射についての視点」(7月7日)
「北朝鮮のミサイル発射と北東アジア情勢」
「日本人は何故政治的煽動に弱いのか」
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●国連で日本が提起した安保理事会決議案は、当初の国際連合憲章7章(「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」)に基づく決議にはならず、拘束力のない決議を全会一致で採択という結果になった(日米はまだ拘束力があるとか主張しているようであるが、これで終わり)。重大なことは、日本の支配層が、武力に道を開く可能性がある7章決議に拘泥した点であろう。しかし、これは国際世論のバランス感覚もあり、東アジアの平和を外交によって追求する路線にひとまずは落ち着いた。

 もし7章決議になれば、アメリカの北朝鮮への武力攻撃の可能性が一段と強まり、それに対する報復手段として、日本へのミサイルによる反撃の可能性も一段と強まったと思われる。このような認識は、日本のマスコミでは殆どふれられていない。おかしな話しである。

 さて、今回の北朝鮮のミサイルの実験(7発発射)であるが、テポドン-2に関心が集中しているようであるが(テレビなどの解説を含め)、日米にとって一番悩ましいのは、現時点ではテポドンではなく、北朝鮮が200発持っていると言われるノドン(射程距離1300㎞)であろう。このノドンは日本の全国土が射程に入るとはいうものの、短距離ミサイルであり、バリバリとミサイル発射実験を行っている日米としては(実験どころか、実戦でも使用しているアメリカやこれと一体になって演習している日本軍=自衛隊としては)違法性を主張しづらい。つまり色々と国際法などを持ち出しても、非難するのは難しいわけである。だから、多分失敗したテポドン2の方を中心にして、長距離ミサイルの実験を通告もしないで行った、と非難をしたわけであろう。

 日本政府の非難は、一般的な緊張強化としての実験という性格だけではなく、平壌宣言違反であることと、通告なしの実験でもあり国際法違反であるという2点が中心になっている(それに6者協議の共同声明も付加)。この妥当性については、浅井氏が述べられているように、北朝鮮側の言い分も参照すると、かなり無理があるというか「水掛け論」であろう。
 今回の北朝鮮の実験に関し、日米の反応の差も興味ある分析対象であるが、ここでは省略する。一言いっておけば、アメリカの北朝鮮の「専門家」は殆どが93年の危機の際に対応した人間であり、民主党系の人が多い。日本のような「情緒的」過剰反応というのは少なく、プラグマティックな反応が一般的だろう。

●そこで、浅井氏の見解について見ると、「私は、安部官房長官の声明をはじめとする日本側の一連の対応は明らかに過剰反応であると思います。」と述べている。私もそう思う。経過をはしょって結論だけ述べると誤解も受けるが、この辺は、浅井氏のHPをジックリを読んで欲しい。私などが述べるより、遙かに事実関係を踏まえた説得力ある議論が展開されている。

 眼目は以下のクダリである。「以前からこのコラムで書いているように、北朝鮮脅威論は虚妄であり、アメリカの先制攻撃によって始まる朝鮮有事のみが考えられる戦争シナリオであること、北朝鮮は、ライオン(アメリカ)、虎(日本)にいつ何時襲われるかと戦々恐々しているハリネズミであること、戦争を起こさない(したがって日本に飛び火が飛んでこないようにする)最大かつもっとも確実な保証はアメリカをして先制攻撃の戦争をさせないことです。そのためには、岩国を含めた在日米軍基地の再編強化を許さないことこそがアメリカの危険な戦争を阻止することにつながるのです。この私の考え方は、今回の北朝鮮のミサイル発射によって何ら修正を受けるものではありません。」

 つまり
①東アジアにおける軍事紛争の可能性は、アメリカの先制攻撃によるものだけが想定される。
②北朝鮮は、先制的に日米に攻撃を仕掛ける戦力も体力もない。
③アメリカの先制攻撃を避ける一番の方法は、日本の米軍基地再編強化を許さないことである。

 全面的に賛成である。日本の支配層からは、その後、「敵基地攻撃論」が出て、座してミサイルが飛んでくるのを待つのかと言った議論が噴出している。それに伴って、韓国などでは日本の「先制攻撃論」として警戒が強まっているのである。こういう「盛り上げ方」が、国際政治では一番危険なのである。

 よく考えて見ると、先制攻撃などは勿論論外であるが、アメリカが北朝鮮を攻撃した際に、日本の基地を使用すれば、北朝鮮は国際法上からも当然の「権利」として日本の基地等をたたくことができるわけである。これを非難すことはできないわけである。
 北朝鮮の「瀬戸際外交」などとという批判があるが、日本の外交も相当に瀬戸際である。アメリカべったりの緊張感のない輩が、際どい火遊びに手を染めることは、非常に危険であり、絶対に止めさせる必要がある。
 浅井氏の議論で説得力があるのは、日本の実践的な平和の追求に仕方に言及していることである。つまり、米軍基地再編に反対し、先制攻撃の態勢強化を許さないという方向である。

 なお序でに言っておくと、今回の北朝鮮のミサイル実験はテポドンは失敗したのかもしれないが(わざと短距離にしたという説も自衛隊サイドなどから出ているー要するに長距離ミサイルの実験だったと言い張るための主張か)、ノドンの方はかなりの精度で着弾している。
 ヒズボラのイスラエル攻撃でも、イラン製の短距離ミサイルは結構の精度になっているらしい。従って、アメリカが先制攻撃を万一行った場合、日本の都市はかなりの「覚悟」をしなければならないだろう。
 中東の紛争や、アフガン、イラク戦争をテレビで観戦していた方たちは、戦争の恐怖を肌で感じることになるだろう。

●北朝鮮の今回の実験は、実はアメリカが金融制裁を行ったことが背景にあると言われている。恐らく、これは真実であろう。北も麻薬の密輸であるとか、偽札製造であるとか「おいた」が過ぎたことは事実である。
 今回の件でハッキリしたことは、中国と北朝鮮の関係も複雑化しており、中国外交部の代表がキムジョンイルと会えなかったことも暴露されている程である。
 中ロはエネルギー政策(=地政学的な関係も含め)でかなりの共通項を持ち、アメリカのエネルギー戦略との矛盾が多く、北朝鮮や韓国との関係重視の流れになっている。
 今回の国連安保理事会の決議やサミットにおける言及などで、北朝鮮の国際的な孤立は深まったと思うが、日米と中ロ、ヨーロッパの関係も一層複雑化したというのが実相であろう。アメリカと中国の利害関係も複雑であり、北朝鮮は、米中の「出来レース」を疑ったハズである。中国に着目してみると、今回の北朝鮮との「調停」における失敗は、確かにその存在価値の低下と見られる側面があるが、同時に、サミットにおける世界市場への参入を背景とした「存在感」は日本の比ではなかった。市場への融合が急速に進展しているわけである。

 浅井氏のHPの17日付けでは、「日本人は何故政治的煽動に弱いのか」と問うている。私自身は、確かに日本人は政治的扇動に弱いと思うが、欧米においても別に「強い」とは思えない点で浅井氏とは若干意見が異なる。
 サッカーのW杯でのジダンの頭突きに関する見解は、フランスで「賛成」が圧倒的であり、イタリアでは「手をだしたら負け」という意見が多い(らしい)。これも、単純な問題であるが、政治扇動への「弱さ」とご都合主義の合作であろう。
 サッカーの試合といえども、国際情勢や国内情勢を無視して、勝手な議論はできないということであろう。アレが日本と北朝鮮の試合だったらどうなっているだろうか?結構、危ない話しになるのではないか。

●いたずらに危機感を煽り、日米軍事同盟の強化や、国内の治安強化などを志向する政策は、あきらかに日本と東アジアの平和に逆行するだろう。
 以前、拉致問題に若干ふれて話しをしたが、国家の犯罪を告発し(CIAなどは拉致をしても生かしておくことはない)、その被害を受けた「国民」が共同して国際的に国家の犯罪を糾弾するといった「構図」が出来ないことが、拉致問題VS従軍慰安婦・強制連行という「構図」を形成しているのである。
 ドッチが悪質かとか、まず日本が謝るべきだ、などの議論は不毛である。右翼さんが一方的に「得をする」構図になっていることが問題なのである。

 さて、北朝鮮が国際常識のない国であることは明確であるが、かといって、全くデタラメなことをしているというわけでもない。多分、旧ソ連のスターリン支配の時代の「実質」は、ああいったものだったのだろうと一人で納得しているのであるが、力のバランス論や、弱者の戦術という点で北の選択は「合理的」である。核を持たないうちは何をされるか分からないというのは、イラク戦争を見れば、子どもにも分かる論理である。

 そういう方向に、追いつめるのではなく、政治的に国内の弾圧体制などの人権問題を重視しつつも、外交によって、危機の醸成を避ける努力が必要である。残念ながら、日本国憲法の「非戦平和」の理念は、まだまだ国際的には通用していない。国連の機能を一歩でも二歩でも、この理念に近づけ、戦争を放棄した国でなければ出来ない「貢献」を行うことを真剣に考えるべきであろう。

 韓国ですら、「日韓もし闘わば」という論文が世論を騒がせる時代である。南北の戦争は絶対に避けたいとう「当然」の思いが、韓国にはあり、日本の基地からの米軍による先制攻撃などにも反対することになる。
 危機管理のできない者が危機を醸成すること程危険なものはない。小泉首相、阿倍官房長官をはじめとする政府の面々は「火遊び」はやめにしてもらいたいものである。

●というわけで、異論も多くあると思うが、国際的なバランス感覚や、北朝鮮をどう見るのかという基本的な視点を確立する必要があるだろう。日本のマスコミの対応(政党の対応も)があまりにも酷いので、敢えて浅井氏の議論を紹介し、賛意を述べた次第である。