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 2007年09月13日(木)

不思議な辞任ー安倍内閣の末路

●新幹線で東京に向かう直前に「安倍首相辞任」のニュースが流れた。臨時国会の所信表明演説を行って、参院選挙での「大敗」について反省をしたものの、「テロ特措法」の延長に政治生命を賭すると、大見得とも脅しとも取れるような発言をしたばかりであったので、「なにか新しい事態が発生したのだろうか」など思いつつ列車に乗り込んだ。
 移動中は殆ど新しい情報などはなく、上野に着くのが待ち遠しく、なにか推理小説のトリックの解明をまつ気分で列車を降りた。一瞬、いま書いている原稿(既にゲラになっているが)には「安倍内閣における道州制の位置」などの一文も含まれているので、「このままで行けるかどうかも判断が必要かな」などと思いつつ、ネットニュースをザッと眺めた。

●毎日新聞のニュースで、辞任表明の「全文」と「一問一答」を読んだのであるが、読んだ後に益々疑問が膨らんでしまった。内容が支離滅裂であることは「いつもの通り」なのであるが、アメリカに対し、自衛隊のインド洋における給油活動を停止してはならない(対米公約)、つまり「テロ特措法」の延長が自分が首相をやっていると円滑に行かないというのが「辞任」の理由らしい。
 しかも、「いつ決断したか」という質問に対し、小沢民主党代表に党首会談を申し入れたが実現出来なかったのでと述べている。辞任発表の当日だという。子どもの使いのような話しではあるが、参院選の大敗によって民意を代表していないと言われているので、自分が首相をやっていると党首会談も出来ないというような説明をしていた。全くもって不可解である。
 安倍晋三の「頭の中」はどうなっているのか。これは政治の問題ではなく「解剖学の対象だな」などと思いつつ、他のニュースに目をやると、なんと小沢民主党代表は「党首会談を申し入れられた事実はない」と述べているではないか。しかも、「自分は40年間、政治の世界にいるが、こんなことは初めてだ」とのべ、安倍首相が政権を放り出したことを「無責任」と口を極めて非難しているではないか。

●おぼろげに、分かってきた辞任の理由は、①アメリカとテロ特措法の延長を約束してきた②従って、一身を賭してこれを実現する③そのために参院選挙での大敗を反省して、民主党とも「腹を割って」一致点を探る?→党首会談→実現せず→従って辞任という「筋書き」だということである。安倍首相自身が語っているのは、これがすべてである。「局面の打開」などいう表現もでてくるが、要するに党首会談もやれない首相では「局面を打開できない」と言っているだけなのである。驚くべき「政治家」である。
 また、辞任の理由には、参院選挙で大敗した原因である「年金問題」であるとか、格差の拡大や地方の疲弊などは一切出てこない。参院選挙で、国民には全く問うていないアメリカの戦争支援=給油活動の話しだけなのである。
 これは一国の首相として、全くの本末転倒、思い違いも甚だしい由々しき事態であろう。マスコミは、現行法の継続ではなく、新法を出すにしても、参院で否決されて衆院に回り再議で三分の二の賛成で可決するのはかなり困難であり、また時期的にも間に合わない可能性が強いと報道していた。しかし、これまでの安倍首相の政治姿勢として、民主党を抱き込む方向を示しつつも、衆院の圧倒的多数を活用して事態の打開を図るのではないか、というのが一般的な見方であった。それが、党首会談を断られたという「だけ」で泣いて帰ってきてしまったのである。これはもう、殆ど病気の世界であろう。

●ここから「どうするか」を考えるのが普通の「政治家」というものだろう(笑い)。党首会談(実際に申し入れたのかどうかすら不明なのだが)を断られた程度で「やめる」というのは、どこかのブログに書いてあったが、小学生が「今日はお腹が痛いので学校を休む」というレベルである。
 しかも一方の党首は、「党首会談など申し入れられていない」と公式に発言をしている。更に、不思議なことは麻生幹事長は「3日位前に話しがあった」「健康問題が原因」などと記者会見で述べているではないか。辞任表明の直後のニュースでは、ある週刊誌が「脱税問題」で記事を書くが、内容に関する回答を求めていて、その期限が丁度2時だったという話しまで流れていた。
 辞任表明の一問一答などを読んでも、聞いている記者が納得していない様子がありありと見えるのであった。だから、健康問題とか16年も前の相続にまつわる問題などが「取りざた」されることになるのであろう(これ自体、実際の所は不明であるが)。

●さて、問題は「その先」、今後のことである。あるマスコミは、マスコミ界の大御所(多分、読売新聞のナベツネのこと)が、谷垣、津島、加藤紘一、古賀氏などを呼んで会合を持ったなどと報道していた。これは辞任表明前のことであるが、安倍ではもう持たないので、どうするかという相談だったらしい。そこで、見てきたような話しになるのであるが、福田康夫で一気に事態を解決したいと町村派(森喜郎元首相)に持ち掛けるというような話しになったというのである。
 この辺の話しは、どの程度信用できるのか不明であるが、安倍内閣の閣僚の不祥事が暴露されるプロセスを見ると、かなりの時間をかけて調べないと出てこないような情報も含まれている。山形出身のエンタケ(自称)農水相の農協への補助金がらみの問題などは、地元でも霞ヶ関でも知れていたことであろうが、安倍氏はこれを知らなかったのか。不思議な話である。しかし、暴露される事実は、かなりの調査が入ったものがいくつか含まれている点には注意を要する。つまり、支配層内部の矛盾・軋轢の存在である。総合すると、安倍辞任に向けて、かなりの「包囲網」が出来ていたのかもしれない。安倍には、党内調整が出来ているようで、出来てないというのが実態であったような気がする。

●安倍首相は、辞任表明の際も政治の空白をつくらないために、できるだけ早く総裁選挙を行って欲しいと述べていた。しかし、安倍首相が辞任した理由が、説明の通りであるとすれば、自民党の政権「たらい回し」は馴染まない。衆院を解散して、自衛隊のアメリカの戦争支援行動の是非=テロ特措法の是非を巡って、民意を問うべきであろう。辞任の理由として、これしか挙げていないのであるから、当然の話しになろう。
 また、国民の立場から見ると、安倍首相が辞任の理由に敢えて挙げていない、国民生活に関わる諸問題もまた「争点」になるべきであろう。改憲の姿勢や消費税なども当然に争点である。
 つまり、安倍首相が辞任した後、誰が総裁になっても、その内閣は国民に対して説明責任を果たしていないことになる。

●こうった状況の下では、選挙管理内閣のような性格のもの以外はナンセンスになろう。
自民党の崩れ方は、ある意味不可逆的なものである。これに代わる「民主党」の方も、本来の新自由主義的な政策をペンディングして農政であるとか「生活重視」の姿勢を打ち出している。これ自体は結構な話であり、忠実に実現をして欲しい課題も多い。しかし、自民党が都市部でそれほど崩れていない現状や、新自由主義政党に「脱皮」していること、また、安倍内閣の推進力には、新保守主義的な部分が大きな存在になってきたことなど、政治力学を総合すると、日本における「二大政党制」がどういう形になっていくのか、歴史的な帰路に立っているように思われるのである。
 政界の再編(自民、民主をガラガラぽん)という方向もあり得るし、現在の野党が一致点で共闘して、それなりの成果を挙げるという「進歩的な」結果になる可能性もある。

●そこで、強調したいことは、「二大政党制」が確立して、どっちも同じであるとか、日本では「二大政党制」は定着しないとか、一般的に民主党は自民党より「ベター」であるというような「形而上学的」な解釈論に陥らないことである。安倍内閣が参院選挙で改憲を前面に打ち出し切れなかったのは、勿論、「消えた年金」などの直近の政治的問題で世論が形成されたこともあるが、なんと言っても3年にわたる「9条の会」などの憲法擁護の運動の「成果」という面が無視できないのである。
 つまり、大衆闘争、国民の要求に基づく運動が「まず」あり、これが複雑に入り組んで、今日の政治状況を形成しているという認識が重要なのだと思う。黙って見ていても、「落ち着くところに落ち着く」だけになるだろう。麻生か福田か、谷垣か、はたまたクレージー小泉の再登場か、などの議論はどうでも良い話しなのである。まあ、田舎芝居としては面白いかも知れないが・・・(未完というか、未定稿)

香港鯉魚門辺りの海鮮料理屋=怖い所