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 2006年10月09日(月)

北朝鮮の「核実験」と今後の国際社会

●北朝鮮が10月9日、核実験を行ったという声明を発表した。韓国や日本でもそれぞれM3.5~4.1の人工的な「地震」が観測されていることや、様々な状況の中で、実験の規模やどの程度の「成果」があがったかは別にして、核実験が実行されたことは間違いないだろう。
 実は、前回のブログ「北朝鮮の核実験実施声明の見方」は、私の予期に反してかなり多くの反応を得た。それなりにアクセス数の多い「ブログ」や掲示板でもかなり引用をされ、今日的に北朝鮮とその核実験などに関する「基本的視点」を示すことの重要性を感じた。つまり、マスコミは色々と情報は「垂れ流す」ものの、正確な理解というのは、意外と難しいということであろう(株価への影響などを問うている「アホ」な新聞もある(笑い)。
 前回のブログで強調したことは、色々な視点があるが、北の「瀬戸際政策」には間違いないが、あまりにも「当面」の問題に核実験の問題を絞って報道している嫌いがあることであった。アメリカとの直接協議や金融制裁緩和に向けての「プレイ」といった情報が氾濫していた。こういった状況を踏まえて、私は、現在の国際情勢に鑑みて、北の核実験はもう少し、広い国際情勢の視野から見るべきであり、北の「存続」をかけた「政治判断」であると論じたわけである。その点では、既存のマスコミの情報と比して、多少は意味のあるものとなったと思っている。

●さて、北の判断はどういうことだったのか。そして、今後の国際情勢はどのように進むか。日本はどのような立場から対応すべきなのか。安倍内閣にとっても、発足当初の最大の「難問」になることは確実である。さて、中国の「人民日報(日本文)」は以下のように、北朝鮮の核実験への非難声明を報道した。

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  朝鮮が9日に核実験を行ったことを受け、中国外交部が声明を発表した。内容は次の通り。
10月9日、朝鮮民主主義人民共和国は国際社会全体の反対を無視し、核実験を強行実施した。中国政府はこれに対し断固たる反対を表明する。
朝鮮半島の非核化実現と、核拡散への反対は、中国政府の一貫した揺るがぬ立場だ。中国は朝鮮側に対し、非核化の約束を守り、情勢をさらに悪化させる可能性のある一切の行動を停止し、6カ国協議の場に再び戻るよう強く要求する。
北東アジアの平和と安定の維持は関係各者に共通の利益である。中国政府は関係各者に、冷静な対応と、交渉と対話を通じた平和的な問題解決の方針堅持を呼びかける。中国はこれに向けて引き続きたゆまぬ努力をしていく。(編集ID)
「人民網日本語版」2006年10月9日
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●結局のところ、北朝鮮のこの間の態度を分析すると、かなりの国際的な「制裁」を受けても(当然に予想されるところであろう)、核兵器を所有し、「核の恐怖」による「均衡」という古い「冷戦的思考」(=旧ソ連・米国)によって、核の保有を均衡理論として評価する視点に貫かれている。つまり、核を所有し実用化することによって、自国の安定=武力均衡による安定が達成されるということである。
 これは、前回も指摘したが、イラクやアフガンの状態を見ると、結局のところ「大量破壊兵器」の「不存在」が、アメリカに侵略を「決意」させた原因であり、いいように武力侵略されたと見てきたということである。これは、残念ながら、アメリカの態度を見ると、「当たっている」部分があることを否定できない。国連の「非戦」の発想が否定され、集団的自衛権の行使という国連憲章の「弱点」が集中的に露呈してきたわけである。
 北朝鮮が、核実験を「決意」した背景は、こういった国際情勢があるが、多少まとめ的に表現すると以下のようになろう。

①アメリカは9.11のテロ以降、約1ヶ月でアフガン侵攻を開始し、タリバン政権を打倒して、ユニラテラリズムと国際協調を使い分けながらも、アフガンに「自国の政権」を確立した。しかし、イラクでは、「傀儡」政権そのものが崩壊の危機にあり、イラク戦争では、アメリカ兵の死者が9.11テロの被害者数を超える程の数になった。14万人の派兵はアメリカには大きな負担であるが、巷間言われたように、この「倍」の派兵は必要な程の状況である。撤退すれば、「元の木阿弥」的な状況になる可能性が強く、反米意識だけが強化された結果になりかねない。
②かつての、アメリカの「二正面作戦」は、現実的には「一正面」への対応すら不可能な程のダメージを受け、アメリカ国内における「反戦」や「厭戦」のムードは、近来になく高まっている。ここから、アメリカは全世界的な米軍の再編と、先進諸国による「戦費肩代わり」「攻守同盟化」をすすめようとしているが、これも、世界レベルで様々な抵抗に遭遇し(沖縄の県知事選挙などは、その好例になるだろう)、再編が達成できる保証もない。
③こういう状況の中で、米中の関係は、かなり複雑な様相を呈している。先般の国連安保理事会における北朝鮮に対する「非難決議」において、アメリカは中国の北朝鮮「説得」について、期待と同時に「踏み絵」的な対応を行った。結果は、中ロなどの「冷静な対応」「国連憲章7章決議をさける」という流れが現実のものとなったが、中国が北朝鮮を説得できなかったという冷厳な事実も残った。今回の中国の異例の強い非難声明について、ある報道によれば、北朝鮮の高官が「中国は米国の犬になった」と述べたと言う報道すらある。
④核兵器の問題は、核保有大国によって核の独占が行われ、結局の所、先進資本主義同盟=階層的な現代帝国主義による「核独占」と、非対称の戦争によって、先進諸国の国民は「アメリカがアフガンやイラクへの猛攻を行うのをテレビで観戦」するといった、歴史的にみても極めて不謹慎・非人道的な事態が生じてきていたのである。この中で、インドやパキスタンは、相互の牽制とともにアメリカなどの出方を見極めつつ(反米の姿勢は取らず)、急いで核開発を行ったのであった。イスラエルも核実験は行っていないものの、核兵器を所有していることは確実であると言われている。つまり、前回ブログのキモでもあるが、核独占の大国による強制と、現実の非対称戦争による途上国の悲劇が相まって、核独占こそが核拡散であるという「論理的背理」が現実のものとなったのであった。北朝鮮は、こういった事態を冷静に「分析」し、時間を稼ぎつつ(瀬戸際政策やものとり政策と評価してもらったことは、大変に「うれしかった」に違いない。餓死者がでることなどについて、北の支配層が気にかけるようなことはないのである)、「原理原則」に基づいた核開発を急いできたというのが真相に近いのではないだろうか。「核廃棄」「核開発放棄」を決断させる方法が現実化する可能性はあったのだろうか。この辺は、「歴史を見よう」ということなろう。

●中国は、北朝鮮が「正確」に見ているように、資本主義への道を歩んでいる(と見てよいだろう)。確かに、プロレタリア独裁ではなく「中国的法治国家」や「中国的社会主義」などのスローガンに見られるように、「社会主義」の標榜をやめたわけではないが、憲法改正によって、搾取を認め(一定規模以上の民間企業)、資本の輸出も一定の制限内ではあるが認めるようになってきた。これは、中国市場が世界のマネーを吸引し、中国自体にも資本輸出が可能なほど(それを認めないとハイパーインフレが発生する程の)の資本蓄積が行われてきたことの証左でもある。
 韓国や北サイドの報道では、中国は前回の国連安保理事会の「非難決議」以降、金融制裁を強め、北朝鮮の海外金融資産の差し押さえなどを行った。金額的には未確認であるが、これはかなり大きなダメージになる。同時に、中国はロシアに対しても同じようなことを行っているが、北朝鮮の希少金属の採掘権を購入したり、ODAならぬM&A的な行為を強化している。北にとってみると、一定の「援助」や「支援」と言えなくもないが、やはり長期的にみると「植民地化」の様相である。そうなると、残されるのは「政治的反発」ということになろう。

●アメリカと中国の関係は、単純ではなく、市場化という共通土俵での主導権争いを含みつつも、地政学的に大きな矛盾を持つ。アメリカが、「ニューエコノミー」という不況知らずの経済学にうつつを抜かしてきたのは、中国という超大市場の存在抜きに考えられない。日本のデフレや賃下げ、「失われた10年」も中国への資本移転と、そのデフレ要因抜きにはあり得ないだろう。

 おそらく、今回の北朝鮮のへの「国連決議」は7章の問題を中心として、白熱した議論になろうが、かつてない「強い非難決議」があげられるだろう。そういう中で、日本の役割は、国連憲章の上を行く、非戦の憲法の国際的な普及であり、核兵器そのものの、一括廃棄という核廃絶の運動であろう。
 南アフリカのように、自主的に核廃絶を行った国が、この地球上に存在することは、一筋の光明である。「力の均衡」やそれが現実的な政治を「説明する」力となっているうちは、核廃絶はできない。
 同時に、核によらない戦争が、極めて「非対称」な戦争になることも、この間の国際状況から見て取れる。この「背理」をどのように解決して行くのか。戦争を商売にする企業の撲滅や、先進資本主義国内部の「非戦」「反核」の運動の重要性が今日ほど強くなっている時期はないだろう。

●当面は、国連安保理事会の決定が最終的に「どの程度」のものになるかがポイントであろう。また、アメリカがこの「決定」との関係でどのような行動を起こすのかについては、この数週間が「山場」であろうが、中国の声明にあるように「冷静」に対応(北の核を容認せずに)することは極めて重要であろう。朝鮮半島の「南北の統一」は、現時点で非現実性が強まったが、武力によらない「非核の朝鮮半島」「非核の東北アジア」の形成に向けて、日本の役割も大きい。何よりも、北に取って最大の脅威である、在日米軍の再編・強化に反対し、日本を平和な「島」にしていくことが日本国民の国際的責務であろう。そして、自治体が「国民保護法制」の現実化を急ぐような事態を避けなければならないだろう。

 まだ、色々と言いたいこともあるが、核実験の具体の様相も報道されておらず、あまり先走っても得るものが少ないので、この辺にしておきたい。地方自治を中心にしたブログとして異例の論考が続いたが、まあ、平和あっての地方自治であるので、ご海容をいただきたい。