2005年09月13日(火)
2005年総選挙の「感想」
●この拙論を読者がみる頃には、マスコミで選挙の詳細について発表もされているので、より「冷静」な選挙結果に関する評価が可能となっていると思われる。当面、少ない資料に基づいて、一定の「感想」というか、論点について述べてみたい。

Ⅰ)選挙結果の概要
①既に、マスコミによって「大々的」に報道されているように、自民党が296議席という「大勝」であり、圧勝度は1960年の池田内閣の際の総選挙に続いて、戦後第2位の議席占有率であるという。公明党の31議席を加えると、「与党」の議席は、480議席中327議席となり、68.1%、改憲発議に必要な議席の2/3を超える。
②民主党は、選挙前の177議席から大幅に減らし、113議席と「惨敗」をした。単独過半数をめざしたが、「二大政党制」すら実現できない程の「見事な」負け方であった。
③共産党と社民党は、それぞれ9議席(解散時と同じ)、7議席(解散時5議席)となり、「踏みとどまった」という評価がマスコミからは下されている。評価は後ほど述べたいが、両党の合計が870万票になっていることは、郵政民営化是非論が席巻した選挙において、なお、「護憲」を最大の争点とみる国民が「健在」であることを示した。
④自民党から「分裂」「排除」された、「国民新党」「新党日本」などの諸派や「無所属」の、議席は合計で18議席であった。
Ⅱ)結果の「見方」について
①みたように、結果は、自民党の「歴史的大勝」であったが、選挙制度の特徴をおさえて、結果を見直すとかなり違った面が見えてくる。296議席中、小選挙区における議席数が、219(全小選挙区の議席数の73%!である)であり、比例代表は77(議席数の43%!)である。つまり、自民党の「大勝」は小選挙区での勝利に裏づけられたものである。
②では、郵政民営化が「支持」されたという評価は、何によって可能になるのであろうか。議席数で評価するならば、これは「圧倒的に」支持されたとみるべきであろうが、比例の支持率でみた場合はどうなるか。
自民党の比例代表における得票率は、表のように、38%に過ぎない。民主党が31%であるから、拮抗とは言えないまでも、圧勝などとは到底言えない。公明党の得票率13%を加えて、やっと「過半数」というレベルの支持のされ方であるとみて良い。
政党を選択するのは、この比例代表部分であるから、政党のマニフェストの支持の度合いは比例をみるべきであると言ってよい。
③小選挙区の自民党の当選者数は219人であったが、東京で2つ(一つは共闘の公明)を除いて、全てで勝利したように、都市部における「躍進」が今回の選挙の特徴であると言ってよい。もっとも、小泉首相の下で、都市部における自民党の伸張は、これまでの選挙でも傾向的に強まってはいたのであるが。
都市部に強い、民主党というイメージがお株を奪われた格好になり、今後の民主党の政策、組織上のスタンスに大きな影響を与えるものと考えられる。
④日本国民は「全てが無党派」であると言われる位の状態になっているが、定評のある朝日新聞(今回、東京の比例代表の当選者を間違える失態を犯したが)の出口調査によれば、無党派層は、全体の21%おり、そのうち、実際の投票した先は、民主党37%、自民党33%、共産党8%、社民党7%となっている。つまり、民主党が「依然」第一党なのである。しかし,2003年の総選挙の際は、民主党が55%を占め、自民党は19%に過ぎなかったので、これと比べると、今回の選挙では、自民党がかなり無党派層の「受け皿」になったことが理解できよう。
Ⅲ)今回の選挙は「どういう性格」の選挙だったのか。
①ハッキリしていることは、衆議院では可決された郵政民営化法案が、参議院で否決され、これに「逆上」した小泉首相が、衆議院を解散するという憲法が想定していない「突飛」な政治的な手法から発した選挙であった。当初、マスコミも、この解散を「スジの通らないもの」(両院の協議や、衆院の再議などの規定もあり、敢えて言えば、参院で否決されても衆院の三分の二で可決されるという「制度」を活用しようという解散とみることは不可能でないとされたが、その時は、「到底無理」な話しと認識されていた)と批判が多かった。
②しかし、マスコミは当初のこのような憲法判断などは、振り捨てて、「郵政民営化の灯を消すな」「郵政民営化の是非を問え」と叫びはじめ、国民が直接郵政民営化の是非を「投票」行為によって示すことが重要だという議論が跋扈し始めた。これは、参院で郵政民営化が否決された直後、官邸における小泉首相の30分に渡る「郵政民営化必要論」「殺されても民営化する」という気迫ある演説や議論に大いに引きずられた。
天性のアジテーターであると言って過言ではないだろう。
③小泉首相の郵政民営化を支持していた、財界も解散を支持したが、それは、この機会を逃すと当分の間、民営化は不可能になるという「焦り」「もったいなさ」という視点からのモノが大半であった。経団連などは、郵政民営化オンリーではなく、構造改革全体の評価が選挙の争点であると述べていた。この時点で、小泉首相の真意を測りかねていたわけである。確かに、自民党はマニフェストは発表したが、首相は、争点は郵政民営化一本で最後まで走ったのである。
④小泉首相の政治手法は、自民党内部に構造改革を遅らせようとする勢力や、反対する勢力があることを「活用」し、小沢一郎が「守旧派」と命名した教訓を発展させ(?)、「抵抗勢力」としてやり玉にあげることであった。今回は、小選挙区制と政党助成金によって、政党の中央集権制が、金銭的にも組織的も強化されてきたことを背景に、反対派議員を党として公認しないことを明確に打ち出し、国民の「派閥批判」の世論に答えたのであった。
当初は、参院で否決した議員の方が「英雄」になりそうな「雰囲気」もあったのであるが、党の決定、マニフェストなどの「正攻法」によって、自民党型の「ウジウジ」した、国民の目から見えない部分での「暗躍調整法」への国民の反発を最大限利用した、「公明正大」な切り方をして見せた。
⑤これに加えて、「刺客」であるとか「殴り込み」といった、やくざ映画まがいの話しになり、女性の刺客と公共事業ばらまき・利益誘導の利権「親爺」の対決が演出された。国民新党と新党日本だけで280万票も得票しており、自民党の1割を超えているので、単純にこれらの勢力が「粉砕」されたわけではないが、今後の政治のおけるウエイトが低落することは避けられないだろう。
こういった、スポーツ新聞、芸能新聞感覚の報道が日夜行われることにより、恐らく、投票率が向上されるようなモメントが機能したと思われる。面白い選挙である。この「功罪」は、恐らくマイナスの方が大きいと思われるが。
Ⅳ)選挙の本質をどうみるのか
①そこで、色々のべてきたが、今回の選挙の本質をどう見るのか。政治的評価について述べていきたい。既に、マスコミでも大きく指摘していることだが(そんなことはもう何十年前にも分かっているのだが)、小選挙区制という選挙制度の下では、大勝利と大敗北が紙一重で発生するとう「当然の」の指摘である。「自民党が勝ちすぎて怖い」というような評価が、一般の国民ではなく政治評論家や新聞記者などからも出ていた。冗談はやめて欲しいと言いたい。一体、政権交代のために、小選挙区制のメリットをあれだけ主張したのは、一体、どこの誰だったのか。いまさら「怖い」はやめてほしい。せめて、頭をまくるするとか他にやりようがあるだろう(笑い。
②小選挙区制は、どぶ板選挙になるような気がするが、これは渡辺治氏が述べてきたように、政党中央の支配を強化し、中選挙区制のような様々な議論が錯綜しつつ、代表が国会に集まってくるシステムとは根本的に異なる。マニフェスト選挙が強まれば、どぶ板はなんの関係もないし、「落下傘候補者」でもなんら問題がないことが証明もされた。つまり、身近な要求を政治に反映するシステムではないという点が重要なのだ。これに、政党助成金の党中央による一括支配が加わるので、派閥の領袖といっても、その権限は見る影もなくなる。今回の選挙で橋本派、亀井派は致命的な傷を負った。首相は新人が派閥に入ることを禁ずる方向すら打ち出そうとしている。
③郵政民営化は「圧勝」したように見えるが、先に述べたように「比例」の視点からみると、38%の支持なのである。しかも、消費税は07年にもやらない方がよいとか、要するに、郵政以外の問題は「モラトリアム」というか、現状維持的な論調が首相の演説であった。
最近は、一時に比して、やや景気も持ち直していることは事実であるから、その他は「現状維持」というのは、案外「耳障りがよい」スローガンなのである。そして、郵政民営化はこの間の全てのアンケートが占めているように、国民にとっての緊急性は「希薄」(どうでも良い)なのであった。これを緊急に民営化すると言われれば、「あっ!そう。そこまで言うなら~」となる。
④恐らく、郵政民営化を何故今の時点でやる必要があるのか、政府の説明で理解出来た人は、殆どいないだろうが、逆に「反対派」の説明も、なんのこっちゃかサッパリわかならい話しが多かったとも思う。
特に、最後の方で強調された、アメリカのハゲタカ資本の餌食になるとか、外資に甘いところを持って行かれるという議論などは、一面的なものであった。既に日本のグローバル資本は国際化しており、キャノンなどは株式の52~3%が外資所有である。銀行も20%から30%の比率になっている。つまり、外資と日本の資本の境界線自体が不鮮明であるし、日本の資本がアジアに
行ってやっていることは「是」であるが、アメリカにやられることは「非」であるという説明は、もう弱者の議論ではないわけだ。
⑤実は、筆者もあまり上手に郵政民営化の本質を解明仕切る(それを読者に伝える)ことに成功できなかったが、一定の解明は行った。極めて、複雑で、難しい問題である。財政投融資計画のあり方や、日本の国債管理と、郵貯銀行の資本の所有問題、政府主導の持ち株会社のあり方など、複雑な議論を上手に解明しなればならないわけである。別に政府や自民党が、こういった問題を国民にわかりやすく示したわけではなく、むしろ、この点では、ご都合主義的な「ウソ」までを含めた議論が大半だったと思う。
⑥ここを思い切って、簡略にして、小泉首相は郵政民営化賛成か反対かといって「踏み絵」を強いたわけである。だから、国民的にみて、郵政の問題は何一つ理解が進んだわけでもない。結局、俗受けする「公務員を民間に」とか「公務員の能率の悪さ」などを「スケープゴート」に仕立てることには成功したように思う。彼の「執念」「節を曲げない」政治姿勢への共感も大きかったように思う。
Ⅴ)さて、どうなるか。
①そこで、小泉首相の主張したことを整理すると、今回の選挙は郵政民営化への「是非」であったわけで、これは、一応「是」であったとみてよいと思う。内容は分からないが「是」である。
②しかし、その他の問題については、自民党はマニフェストをだしてはいるが、首相自体が「郵政選挙だ」としているので、なんの公約もないのと同じである。憲法しかり、年金、医療、社会保障しかりである。消費税に到っては、07年にもやらない方がよいと述べた。つまり「改革を止めない」のは「郵政」だけで、後は「安心してくれ」という路線だったのである。
この通りにやる以外に「公約」を守るすべはないハズである。財界のいうように「構造改革」全体を推進するなどとはなっていないハズなのだ。
③小泉首相が憲法を争点にしなかった(できなかった)ことは、大いに評価してよい。9条の会などの運動が、構造改革、郵政問題などと絡んで、本格的に議論が発展してしまうと、構造改革自体が日本の広範な護憲のエネルギーにふれてしまうことになる。これを「断ち切った」政治的直感は鋭かった。
逆に、私どもの方からみると、この構造改革問題と護憲の運動の結合が弱かったという総括になるわけである。
④国民は小選挙区制4年の経験において、既に、ちょっとしたバランスの崩れによって、針が180度振れることを理解したと思われる。ここで、マスコミの果たす役割は大変に大きい。
マスコミ対策という独自の運動の課題も設定する必要がありそうだ。
また、今一番聞きたいのは、小選挙区制導入を煽り、政権交代を可能にする選挙制度として高く評価した一部の学者、政治学者の「見解」である。隠れていないで、堂々と自説を強調してみせて欲しい。
Ⅵ)色々とのべたが、
以上でも、かなり「禁欲的」に自分の議論を押さえたつもりである。論点としては多少「広め」に提供したが、持論は「抑制」した。この辺をベースにして、すこしBBSなどで議論をしてみたいが、参加される方はどの程度、おられるだろうか?
是非、多面的に今回の選挙の内容、本質について、議論を深めてみたいと思うのだが・・・・よろしく。

