2005年06月19日(日)
全国市長会「分権時代の都市自治体のあり方について」
☆全国市長会「分権時代の都市自治体のあり方について」平成17年6月6日
全国市長会が上記提言を発表した。これは、「平成の大合併」と言われる、この間の市町村合併の到達点を踏まえた提言であるだけに、今回の大合併の政治的な総括も密接に絡んでくる性格をもつ。ここでは、第1章の「道州制を見据えた都市自治体と広域自治体のあり方について」に関してのみ触れておきたい。
●市町村合併の全国的な趨勢評価
市町村合併の到達点は、総務省発表によれば平成18年3月末において、市町村数が1822に減少する。平成11年3月末における数が3232であるから、比率でいうと約56%(6割以下)になるわけである。私は、この数の評価については、「当初目標の1000自治体に満たなかったから政治的狙いは成功しなかった」という見方はしていないし、「概ね成功した」とも見ていない。むしろ、「数値」によって「成否」を判断することは「不充分」であるという立場である。現在の自治体の再編は、「自治体構造改革」と規定されるべきものであり、自治体の区域的・空間的な再編と共に、自治体行政が市場化・民営化を進めていることを包括的に見る必要があると考えるからである。
とはいえ、政府が音頭をとった市町村合併が「全く進まなかった」ということであれば、「数」も重要な意味を持つことは言うまでもない。そこで、少し、この問題を考えて見るが、「小さくても輝く自治体フォーラム」のアピールが「『平成の大合併』は、昭和の大合併の98%の達成率という水準と比べると、明らかに『不首尾に終わった』」と述べていることには違和感がある。
総務省は、今年になるまで最終結果について2000自治体前後(ニュアンスとして2000を切らない可能性―総務省メルマガの麻生総務相発言)と判断をしていたし、共同通信や毎日新聞などマスコミの調査でも、1950~1850自治体前後が「予想数」であった。この「予想」との対比で見ると、合併特例法の期限切れによる「駆け込み」合併がかなりの数に上ったことが見て取れる。つまり、1822という数は、最後の最後にバタバタと合併した自治体が予想以上に多かったことを示している。
また、「アメ」のない新合併特例法の下での「合併協議会」の新たな設置も、無視できない数にのぼっており、自治体を取り巻く情勢の厳しさが、ある種の危機感を醸成していると見るべきであろう。これに、「市町村の合併の推進についての指針」による都道府県からの「圧力」がどうなるかという問題が加わる。
●自治体の構成について(「市」のウエイトの増加)
そこで、全国市長会の提言に戻ると「来年の3月には約1,800 団体となる見込みとなっており、市町村の規模・能力の拡充が図られつつある状況となっている。この一方で、現在、第28 次地方制度調査会においては、『道州制のあり方』、『大都市制度のあり方』、『地方の自主性・自律性の拡大のあり方』等、我が国の地方自治制度の根幹にかかわる重要な課題について審議が進められているところである。これらのような状況の中で、都市自治体には、『補完性の原理』の考え方に基づいて、地域における包括的な行政主体として大きな役割を果たしていくことが強く求められており、都市が中心となる分権型社会の実現がこれまで以上に求められている。」と述べられている。
平成18年3月末において、1822自治体のうち、777が「市」、847が「町」、198が「村」となると予想されているが、これは、人口1万人未満の自治体数が1546であった平成15年1月と比して、大きな様変わりであることが理解できる。
平成の大合併では、昭和の大合併とは異なり、小さな町村をなくすことだけではなく、政令市、中核市、特例市への再編も同時進行しており、グローバリズムに対応する地域・自治体の再編であることが踏まえられる必要がある。
●全国市長会の自治体再編提言への疑問
そこで、全国市長会は、道州制を見据えた今後の都市自治体のあり方については、都道府県と都市自治体の「二重行政」を排し、中核市や特例市の要件の引き下げと、人口10万人以上(市長会の提言では、このレベルで特例市とする)の「市」に対する権限移譲を行う方向を目指している。また、道州制導入を「適当」とする意見が市長の7割に昇っていることを踏まえ、「地方公共団体」としての道州制が適切であると述べている。
この方向を目指す中で、都道府県の廃止と道州の地方事務所の設置という点がかなり具体的に示されている。
そして、最終的には人口10万人の都市を基礎自治体の「標準的規模」とし、分権型社会の担い手になることを提起している。
この提言をめぐって、いくつかの疑問が湧いてくる。
第一に、過疎地における人口10万人の自治体が「都市自治体」と言えるのかという疑問である。「市」即都市自治体とは言えない実態が、全国に増加している。岐阜県飛騨市や岩手県一関市などは、広大な面積とかなりの人口を持つ自治体になるが、新しい「市」は過疎指定をされる。「町村」と「市」の根本的な相違について、考えさせられる。
第二に、「基礎自治体」という用語が使用されているが、もちろん、法律用語ではない。地方制度調査会のある時期から使用された「特殊」な用語と言ってもよい。現行地方自治法では、「基礎的な自治体」として市町村が位置づけられている。つまり、市と町と村が同列に並んでいるのである。これに対し、規模能力のある「総合行政体」に該当する用語として「基礎自治体」が登場し、人口1万人未満の町村などは「総合行政体」と見なせないので、「基礎自治体」とは見なせず、制度的にも自治体とは言えないものに再編する方向が指向されてきたわけである。
こういった方向に全国市長会はもう少し丁寧に対応する必要があると思われる。場合によっては、多くの町村の立場と共存できない問題を孕むからである。
●都市と農村の連携こそ、自治発展への道
「市」のウエイトが増加することは避けられないし、ある意味で、自治体の「生き残り」が指向されるとすれば、ある程度の人口や産業基盤が必要であることも全面的には否定できない。しかし、「町村」という歴史的な存在を否定することは正しくないし、また、農村的な自治体が、今後も存続していくことは都市にとっても不可欠なことであろう。
今回の市町村合併は、形式的な「市」への「昇格」が、果たして自治の発展になるのかという根本的な問題を孕むだろう。また、それが「都市自治体」と単純に規定できない性格のものとなる場合も少なくないだろう。
全国市長会には、「基礎自治体」の規模能力向上→都道府県の無用化→道州制の導入という単純な「図式」による、自治体の再編方向を目指してほしくない気持ちが強い。もう少し、都道府県の役割を「全自治体」の視点から深めて欲しいと思うと同時に、町村の発展、連携をめざす立場から、市の果たす役割についても考察を行って欲しいと思う。
全国「市長」会という、性格に規定されることは承知しているが、ここは、全自治体が一致団結して、「地方自治」を守る重要性、憲法で保障された「地方公共団体」の存在を擁護する立場の重要性を指摘しておきたい。
今回の提言が、全体とすれば、水準の高い内容になっているだけに、その理論活動の発展に大いに期待を込めて注文を述べた次第である。

