2005年01月24日(月)

道州制論議の活発化

 第28次地方制度調査会において道州制の論議が進みつつあり、昨年6月の「骨太方針2004」においても道州制導入の検討が盛り込まれた。また、北海道において、道州制特区の議論が始まっている。
 このような中で、最近各団体で道州制論議が大きく展開し始めた。
昨年11月に広島県分権改革推進審議会が「広島県の分権改革推進に関する答申」(以下「答申」)を発表し、今年に入ってからは、関西分権改革研究会(2府7県も参加)「分権改革における関西のあり方」、山口県「分権時代における山口県のあり方(中間報告)」などが発表されている。

 この中で、関経連が中心になってまとめた関西分権改革研究会の報告は、広域連合方式の延長線上に道州制を設定している。注目される提言であるが、これについては別途検討をしたい。
 そこで、都道府県の提言としては、かなり詳しい議論がされている広島県の「答申」について、若干その特徴を述べておきたい。

 広島県は、市町村合併がかなり進み(今後の予定も含め)、90近くあった市町村が最終的には23~25程度になる模様である。村はなくなり、町も少なくなる。こういった状況の下で、県から市町村への「事務・権限の移譲」問題を県として議論せざるを得ない状況となり、道州制などの「制度論」に先行して議論をしてきた経緯がある。

 このような背景から「答申」に添付された事務事業仕訳表は、相当に議論を進めた気配があり、「リアリティ」がある(良し悪しは別に)。これが第一の特徴である。

 第二は、「分権時代における行政と民間との役割分担並びに国、県及び基礎自治体のあり方」の部分が詳しく、突っ込んだ議論がされている。民間との「役割分担」をまず設定し、国・自治体とも「スリム化」することを前提にして、都道府県の廃止と道州制の設置、県の事務の基礎自治体への移譲が強調されている。

 道州制のあり方では、都道府県合併方式も検討されたということであるが、最終的には、「都道府県の廃止」の提言になっている。この辺は、道州制へのプロセスや現実的な政治状況との関係になるが、最近の「提言」類では、ユニークであると言ってよいだろう。

 国の地方支分部局の扱いについては、防衛施設局や公安調査局、航空交通管制部など、ごくわずかなもの(職員数6500人程度、移譲の方は、約20万人)を除いて原則として道州への移譲となっている。県から、市町村への事務移譲は、福祉・保健・衛生など「まるごと」移譲が原則になっている。

 第三は、岡山の提言などとは異なって、道州制の単位として「中国地方」を念頭においており、四国は別という議論である。これは、今後の議論の中でさらに検討をして行くということであるが、道州制の中心地を巡る地方間の綱引きという面の存在は否定できないだろう。

 今回の広島の「答申」は、議論の経過や資料などフルオープン(HPですべて検索できる)という点で、好感が持てるものであり、内容的にも他県のものと比して、議論の「充実」が感じられる。

 そのことを前提として、少し、批判的な視点も述べておきたい。

第一は、都道府県の役割が市町村合併によって縮小しつつある「現実」を正面から批判的に検討していない点である。流れに沿った「議論」と言ってもよい。都道府県の本来的な役割について(産業振興や、市町村への援助機能、市町村では果たしえない広域的な住民生活への支援など…)キチンと議論をしておかないと、仮に道州制が必要だとしても、その機能は「消滅した」都道府県の弱点をそのまま継承したものとなる危険性があろう。

第二は、地方間競争や都市間競争が中心的コンセプトになっている点である。道州制の地域割りなども、地域のGDPの大きさや競争力が発想の中心になっている。過疎地を含めた「中国地方」で道州制を論ずるならば、農業の保持・発展や過疎地の克服などに道州制がどう「役立つ」のか、などを聞きたいと思うのである。都市と農村との「連帯」「連携」が必要であり、いたずらに「地域間競争」を強調するのでは、競争力のない地方や自治体の共感を得られないと思われるし、また、住民生活の擁護・発展という点で、如何なものであろうか。

 今の日本には、GDPで表現できない地域固有の価値や、維持可能な地域という発想が必要なのではないか。道州制の役割に「環境政策」などが盛り込まれていることを見るにつけ、この辺について、ついつい疑問をもってしまうのである。

第三は、経済的な発展や競争という視点が前面にでることと表裏一体の関係であるが、地方空港やインフラの整備がどうしても中心課題になっていることである。私は地方に空港も必要だし、新幹線も必要だという「ものわかり」のよい考えなのであるが、どの道州も同じような発想でインフラを整備して行った際、日本全体を見ると、「○○銀座」という名称が日本全体に広まったのと同じような「金太郎飴」型の道州制になってしまうのではないか。護送船団と同じ結果が「分権」の下でもたらされてしまう矛盾や危険性を感じる。

 身近な市町村のあり方、多少遠くても住民生活を強力にサポートをする都道府県などについて、住民参加による積極的な議論を期待したい。ともかく、道州制については、総論だけで「反対」したり、「賛成」したりする状況ではなくなったことは確かであろう。
 各自治体における議論と、住民全体が自治に対して積極的な関与を行うことが肝要であろう。広島県の「答申」は、今後の議論のひとつの指標となることは確実だろうと思われる。