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 2005年04月05日(火)

市町村合併のリストラ効果考

●総務省の発表では、来年の3月末の時点で全国の自治体数は、1822に減少するということである。「新地方行革指針」では、自治体の定員を過去5年の削減率である4.6%(平成11年から16年)を上回る削減を行うべきことを強調し、各自治体が数値目標を設定するように「助言」をしている。

 実は、民間においては、成果主義の給与や人事査定についての「批判」が高まり(もっとも、なにが成果主義であり何が成果主義的人事査定であるか、曖昧なまま議論が進行しており、学問的には大変に「心許ない」議論状況なのであるが)、終身雇用についてのメリットの見直しなども進んでいるようである。
 これにいわゆる2007年問題という「団塊の世代」の一斉退職が被ってくる。官民に共通する「団塊の世代」の退職・現役リタイアは、年金財政の破綻問題として、また、後継者育成問題として、雇用構造の歪化の問題などとして議論をされてきた。同時に、企業のリストラ機会として、この「団塊の世代」のリタイアをどう活用するのか、ということにも重大な関心が寄せられている。

 「新地方行革指針」でも、こういったことを踏まえ、人員の削減と同時に、慎重に退職者の補充を行う必要があることを述べている。ここでの特徴は、民間のような「集団退職」のもたらす事業継続・利潤確保への「危機感」が薄く、ひたすら「リストラ機会」と把握していることであろう。この認識は、文科省における「教員確保」問題とも異なる。

 さて、『日経グローカル』(2005年4月4日号)に、<「合併市」はこう動く>という面白い記事がでていたので、これを素材にして、市町村合併とリストラの関係について、若干の考察を行いたい。

 『日経グローカル』の記事は、昨年4月1日から今年の4月1日までの1年間に誕生した187の新市を対象にしたアンケートともとにしている。調査の項目は、「庁舎の位置」「職員数の削減」「議員数の削減」「合併特例債予定率」「特例債の活用内容」「合併後の各種行政サービス料金」「新設拡充するサービス」「合併後に積極的に取り組みたい施策」などからなっている。

●職員削減率の上位の自治体を見ると、第1位は、全国1広い自治体の誕生として(メルマガでも取り上げた)有名になった岐阜県高山市であり、削減率が31.5%となっている。第2位が愛媛県伊予市で20.3%、3位が秋田県男鹿市で17.3%となっている。以下、10%以上の削減率(向こう5年間)が16自治体ある。平均は、7%程度ということである。

 これだけで、これまでの定数の削減率(過去5年間)の4.6%を上回るわけで、合併の効果「絶大」というわけである。

 そこで少し高山市の状況を見ておくと、今年の2月に丹生川村、清見村など9町村が高山市に編入合併をした。編入としたのは、合併に伴う条例改正の手間を少なくし、行政組織を一から作り直さずにすむので「無駄なエネルギー」が不要ということらしい。合併当時の財政力指数は、旧高山市が0.7だったのに比して、他の町村は概ね0.2台だった。周辺の小さな町村の「危機感」がもたらした合併劇だったと総括することも可能だろう。蛇足だが、こういった状況の中で、白川郷で有名な白川村が合併をせずに、「非合併」の道を選択したことが注目される。白川郷は海外からの観光客(国連やILOなどのメンバーは東京の次に白川郷を訪れるそうである)の誘致にも自信を持っており、合併せずに今後も自治体として運営していくことを指向している。合併した他の町村との対比が今後注目されてよいだろう。

 定数削減の手法について見ると、ごみ収集、図書館、体育館運営などの業務の民間委託が中心となる。住民サービスの方は、乳幼児医療費無料の年齢の引き上げ、12時間保育や土曜・ゼロ歳児保育の拡大、ゴミ収集の無料化(有料化自治体の)がある反面、公民館の有料化などもある。

 新しい市の端から端まで、車で2時間ということであるから、旧町村の中心地や庁舎がどうなるのか関心を持つが、「地域審議会」に「市長への意見具申権」を持たせるなどの「工夫」がされているようである。元々、観光には強い自治体であったので、やり方次第では、「高山」のブランドが旧町村も使用できるので、期待もあったかも知れない。

 その他、高山市を含めて、新市の施策で多いものとして「防災無線システムの統合」や「防犯・消防組織の拡充」などがある。これは、道州制を睨んだ広域行政組織をめざしており、今後の成り行きに注目をして行く必要がある。もっとも、防災無線の統合などは、自治体が合併しなくても、県の支援や県際行政の拡充などで、実施できると思われる。こういった方向は、必ずしも都市部自治体だけではなく、農村部に広がっている点に特徴がある。
 防災という点では、当然に強化すべき課題であるが、これと自治体の危機管理や、防犯といった異なるテリトリーが一緒くたになっていることも気になる。やがては、警察の再編問題なども絡んでくる議論に発展するのだろうか。

●議員の削減については、在任特例の適用が8割に止まっているが、愛媛県今治市では、削減率は81.9%に及ぶ。合併自治体数が多ければ、当然の話であるが、旧町村の「自治」の実質的な低下が危惧される所である。もっとも、議員の活動がそれに見合う水準であったのかどうかは不明であるが。

●合併特例債の活用では、道路整備や文化施設・コミュニティーセンター、消防・防災施設、学校・教育施設、CATV等の情報化事業などが多い。三年後の施策として一番多いのはコミュニティーバスである。
 こういった状況を見ると、何%特例債を活用したかという問題もさることながら、合併後に拡大した市の領域の交通網、コミュニケーションの確保という方向が見えてくる。
 同時に、今後の施策として一番多かったのは、乳幼児医療費助成、一時保育、高齢者向け給食サービス、敬老祝い金などである。つまり、少子高齢化対応の施策が中心であると言ってもよい。こうった問題が交通・コミュニケーションの確保と相まって、広域化した自治体の「一体性」と人口政策が追求されているようである。

●これまで、「客観的に」自治体の動向を見てきたが、合併の「成否」を占う問題として「まちづくり」のコンセプトがある。中心部を形成する方向で、広域圏域を階層化すると、中心ー過疎という分化となる。過疎地は既に「自治体」ではないので、過疎問題が自治体問題ではなく、その内部問題に転化する。問題は全く解決していないのだが。
 旧町村の庁舎などを「活用」して、それぞれに一定の配慮を行う「地域自治組織」の活用も一定進んでいる。しかし、どの程度の意味があるかは検証される必要がある。現時点では不明である。上越市のように合併特例区を活用する自治体も少数ではあるが存在する。上越市の場合、旧高田市と旧直江津市の中心街はそれぞれ保存する方向で、新しい「核」を意識的に形成しなかった。この方向を新市でも追求するスタンスだというが、実際には、大手のSCの交通中心地への進出などで、旧市街地は寂れてきている。実質的・なし崩しの「中心地」の移動である。
 こういった「のっぺり」とした新市地域の拡大が「まちづくり」として成功して行くのかは、疑問が多い。

●こういったことで、合併をめぐる状況は、人生いろいろ、合併もいろいろ、であり、一概に決めつけることはできない。しかし、合併を機会にした、自治体の「質」の転換、リストラの進行だけは、確実のように思われる。住民自治の後退や住民サービスの後退がないように願うばかりである。